隣保館での「差別体験調査」は差別掘りおこし 人権連福岡県連が県と各自治体に調査反対を要請
人権連福岡県連(川口學会長)は、福岡県が5年間隔で実施している「隣保館人権課題把握調査」に関して、福岡県と隣保館設置の自治体に対して、「人権侵害(差別)体験調査」の反対を強く要請しました。
福岡県人権・同和対策局は、県下33自治体に設置している73の隣保館を対象に、5年ごとに「人権課題把握調査」を実施、前回は2015年に調査済み。
今回、県人権・同対局は、2020年11月から21年9月までの日程で実施と説明。今回調査では、これまでの調査項目になかった「人権侵害(差別)体験調査」をあらたに加えた内容です。
この「人権課題把握調査」は、隣保館職員と県の独自配置職員が共同で実施するもの。「人権侵害(差別)体験」調査は隣保館利用者を対象に書面アンケートによる有無の確認調査です。
これは、2016年の「部落差別解消推進法」と福岡県が19年に制定した「福岡県部落差別解消推進条例」をうけたものです。県人権・同対局は人権連側に「国や外部からの指示はなかった。県独自の判断」と説明していますが、「推進法」や県条例の「調査」に基づくもので、あらたに部落差別を掘り起こし、問題解決に逆行する調査であることは明白です。
県連は昨年12月末、県に「差別体験調査」反対で6項目の要請を行い、1月27日には県側と協議。その場で改めて「差別体験調査」について問題点を指摘、善処を強く求めました。県側は「調査は新年度の4月から予定しているが、内容については固まったものではない。学識者などを含め、内部で検討したい」と述べ、結論を保留しているといいます。
「差別体験調査」は現在の差別の実態を調べるものではなく、これまでの人生体験に基づくものです。被差別体験の時期、年代は直近の10年前なのか50年以上昔のものなのか曖昧で、極めて疑問です。統計調査としての信ぴょう性は疑問です。
このため、県連は2月末までに、隣保館設置の33自治体に「福岡県の隣保館『人権侵害(差別)調査辞退』を文書で申し入れたところです。
申入れに対し自治体の多くは「法の附帯決議があり、地域や個人を特定した調査はできないようになっています」とか「こんな調査をすれば、また行政が運動団体から追及される」、「今ごろ、なんで県がこんな調査をするのか」と調査を消極的にうけとめていました。
市内に9つの地域交流センター(隣保館)がある北九州市は、人権連市協の要請に対して「調査については、県から頭出し(やるということ)しか聞いていない。調査内容については不明」と説明しました。
県連は、各設置自治体の様子を集約、近く県人権・同対局と協議し、差別体験調査項目の削除を求めます。(記事は2月27日)
2020年12月28日隣保館を対象にした人権侵害(差別)等の調査についての申入れ(添付)20201228.pdf
福岡県知事 小川洋 様
福岡県地域人権運動連合会会長 川口學