全国人権連本部に広島県人権連から週刊ポストの6月22日号の特集「部落差別と結婚」に関する文書が送られてきました。広島県人権連では、今回の記事について週刊ポスト編集部宛にこの文書を郵送しています。
 尚、週刊ポスト6月22日号に関しては、ブログ内の6月11日に記事配信されています。左のカテゴリーでは【人権連備忘録】をクリックして参照して下さい。
※以下、要請本文は、下の(Continue Reading=続きを読む)をクリックしてお読み下さい。

週刊ポスト 編集長 粂田 昌志 様

取材、記事は公正、中立で客観性のある報道をするように求めます(意見と要請)

2007年6月22日
広島県地域人権運動連合会
会長 池田実次郎

 週刊ポスト2007年6月22日号の特集「部落差別と結婚」の掲載に関して、以下の意見を述べて要請を行います。

1 広島県の17歳女子高校生の自殺問題の記述をめぐって
 記事は、169ページから170ページまで、広島県でおこった17歳の女子高校生の自殺問題について触れています。
 その中で、自殺した当時の女子高校生の母親Cさんが「『先生の親に部落民じゃいうて結婚を反対されて、もう死にたい…(略)』と妹にいっていたそうです」と記述しています。
 「部落差別と結婚」というタイトルで、この記述により、女子高校生の自殺の原因があたかも「部落差別=結婚差別」との印象を与えかねない内容となっています。
 しかし、先生の(父)親がはじめて「部落」出身者と知ったのは、女子高校生が自殺(1991年10月28日)した後の11月5日であり、父親が部落問題を理由に差別したことはありません。父親が結婚に反対した理由は、相手が現役の女子高校生であることなどによるものです。
 さらに、小見出しに「婚約破棄」としていますが、女子高校生と元教師は結婚を前提に親への説得をするなどしており、「破棄」という事実はありません。ましてや、記事の記述にも「婚約破棄」に関しては具体的に指摘していません。

2 「結婚差別」と決めつけ政治的悪用をした「解同」
 当時、部落解放同盟(以下「解同」)がこの出来事を「婚約破棄」による「部落差別=結婚差別」であると「断言」し、このことを理由に広島県、広島県教育委員会、広島市、広島市教育委員会などに介入しようとした背景があります。
私たちの組織(当時は広島県部落解放運動連合会)はこのことに対して1993年3月5日、「不幸な出来事を政治的利用する『解同』は許せない~女子高校生の自殺問題にたいする全解連の見解」を発表しています。
 見解では、教師の行動が、いかなる理由があっても教師として人間として許せないと示した後、「解同」はこの問題を一方的に「結婚差別」と断定し、当時、同和行政の永続化を目的とした「部落解放基本法」の制定や地方自治体への条例、宣言を求めるための政治的目的に悪用していることを指摘、「解同」がはじめから「結婚差別」であるとの前提から「確認・糾弾」の対象にしており、これこそが「地域社会で自由な社会交流を進展させ、連帯・融合を実現する」解放運動の目的に大きく逸脱したものと警鐘しています。

3 客観性の乏しい報道
 貴誌を含めて、最近のマスメディアが大阪、京都、奈良などでの「解同」幹部の一連の不祥事を継続的に取扱い、報道していることは承知しています。
私たちは、今日の報道が、「解同」の「今日なお深刻な差別」「まだたまだ根強い差別意識」があるという「解同」に都合のよい方便を共通認識にしており、部落問題解決の到達点や記事の客観性が乏しく、国民の多様な意見を反映しきれていないとみています。
今回の記事もまた、この問題が1991年起こったことなどいっさい触れず、読者は最近起こった出来事と受け止めかねないものであること。
また、「婚約破棄」や父親が「部落差別による結婚差別」をした事実はありません。さらに、私たちが見解を発表するなど、この問題にも多様な意見がある中での、このような記述は、客観性の乏しいものであると指摘せざるを得ません。

4 「部落差別と結婚」に関する報道のあり方について
 今回の記事が客観性に乏しいだけでなく、部落の悲惨な状況を強調するだけでは、読者、とくに自殺をした女子高校生と同じ年頃の高校生に展望を示すことができたとは思えません。
政府は1993年に全国調査を行いました。結婚形態について、30歳未満の73%が同和地区内外の婚姻であり、70歳以上の内外婚が17%でした。若い世代になるほど婚姻関係を拡げていることなど、解決に向けて大きく前進していることが明らかにされています。
 報道にあたって大切なことは、「結婚差別」であれば、婚姻は両性の合意が基本であること、現状は旧来の偏見や新たに生み出されている「解同問題」による弊害を乗り越えて解消へと向かっており、こうした流れをいかに促進するか、困難があればその背景には何があるのかを丁寧に明らかにすることです。

5 公正、中立で客観性のある報道を
 貴誌には、今回の報道を教訓に、今後、公正、中立の報道の公共性を堅持し、客観性のある取材、報道されることを強く要請します。