日本学術会議への権力介入を制度化する法人化法案の撤回を求めます
法人化反対の声明
2025年2月16日
日本学術会議への権力介入を制度化する法人化法案の撤回を求めます
学問と表現の自由を守る会
会員候補者6名の任命拒否(2020年10月)に端を発する学術会議へのあからさまな権力介入は、通常国会に提出される法人化法案によって総仕上げの段階に突入しています。法人化法案は、現行法の改正ではなく新法による学術会議つぶしです。法人化による「独立性」を謳っていますが、内閣総理大臣が任命する「監事」によって業務と財政を統制し、外部委員の「会員候補者選定助言委員会」によって会員選考を枠づけ、内閣府に置かれ内閣総理大臣が任命する「評価委員会」によって「中期目標」を評価し活動に口を出す権力介入が法人化法案の骨格になっています。すなわち法人化法案は、戦後一貫して学術会議が堅持してきた活動と組織の「独立性」を根底からつき崩すものです。
日本学術会議は、戦争に対する深い反省に立ち、「科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、 わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命」(日本学術会議法前文)として創設された「科学者の内外に対する代表機関」です。その根幹に「学問の自由」(憲法第23条)があり、政府からの独立性(日本学術会議法第三条)があります。科学を国益に従属させ、政府が直接監督と管理で統制する法人化が行われるならば、もはや「アカデミー」としての基盤を失ってしまいます。
ときどきの政府に対して「科学者の総意」を代表し科学の立場でモノ申す学術会議の存在意義は強調しても強調しすぎることはないでしょう。どの国においても「アカデミー」は政府から独立して、国民全体の福利と人類の平和と繁栄に寄与してきました。日本学術会議も代表格のアカデミーとして国際的に高く評価されています。政府が監督し管理し統制する「アカデミー」はほんの一部の独裁国家を除いて存在しません。法人化法案は、国際的に見て、恥ずべき「アカデミー」への改編と言わざるをえません。
法人化法案には、そもそも立法事実が存在しません。会員候補者に対する違法な任命拒否とその放置こそが問題なのであって、現行の日本学術会議法に問題があるわけではありません。法人化法案はそれ自体が独立性の毀損であり、学問の自由の侵害であり、学術総動員体制づくりの暴挙です。学問の自由が侵害されるならば、思想表現の自由も侵害され、あらゆる自由が次々と侵害される事態になりかねません。私たちは学術会議への権力統制の総仕上げとしての法人化法案の速やかな撤回を求めます。
2025年2月7日 https://academicfreedom.jp/
学問と表現の自由を守る会発起人(2021年9月13日現在)
* 池田 香代子 翻訳家
* 井上 淳一 脚本家・映画監督
* 上野 千鶴子 東京大学名誉教授
* 酒井 啓子 千葉大学教授
* 佐藤 学 東京大学名誉教授
「学問と表現の自由を守る会」事務局長
* 田中 優子 前法政大学総長
* 津田 大介 ジャーナリスト
* 土井 香苗 人権活動家
* 前川 喜平 元文部科学事務次官
* 益川 敏英 京都大学名誉教授(故人)
* 室井 佑月 作家
* 目加田 説子 中央大学教授
* 吉永 磨美 日本マスコミ文化情報労組会議議長