10年3月

10年3月31日 水曜日

ビラ配布逆転無罪 勤務外活動処罰は違憲 堀越事件で東京高裁

 2003年11月、休日に自宅近くで「しんぶん赤旗」号外などのビラを配り、国家公務員法違反(政治的行為の制限)に問われ、一審で罰金10万円、執行猶予2年とされた元社会保険庁職員、堀越明男さん(56)の控訴審判決が3月29日、東京高裁でありました。
 中山隆夫裁判長は「このような被告の行為を刑事罰に処することは、表現の自由を保障した憲法に違反する」として逆転無罪を言い渡しました。

判決の骨子
 一、国家公務員法や人事院規則による公務員の政治活動禁止は憲法に違反しない。

 一、被告の行為は行政の中立的運営、行政に対する国民の信頼確保を侵害しない。

 一、本件の処罰は国家公務員の政治的活動の自由に限度を超えた制約を加え、表現の自由を保障する憲法21条に違反。

 堀越事件は、そもそも尾行、ビデオ撮影など公安警察による違法な捜査により、日本共産党の活動を弾圧する目的ででっちあげられたものでした。高裁判決はこれらについては言及しませんでした。

 一審の東京地裁は、国家公務員法による公務員の政治的活動の禁止を合憲とした1974年の猿払(さるふつ)事件の最高裁判例を踏襲しました。中山裁判長は国公法の政治活動の制限そのものは「合憲」としながらも、今日では国民の意識は変化し、表現の自由が特に重要だという認識が深まっていると指摘。勤務時間外まで全面的に政治活動を禁止するのは、規制が不必要に広すぎるとの疑問があるとしました。

 そのうえで、堀越さんが行った行為は、私人として休日に職務と無関係に、公務員であることを明かさずに行ったにすぎないとして、「国の行政の中立的運営と、それに対する国民の信頼確保を侵害するとは常識的に考えられない」と認定。「被告を処罰することは、国家公務員の政治活動の自由にやむを得ない限度を超えた制約を加えたもので、憲法21条などに違反する」と結論づけました。

 さらに、「わが国の国家公務員への政治的行為の禁止は、諸外国と比べて広範なもの。世界標準という視点からも、刑事罰の対象とすることの当否、その範囲を含めて再検討されるべき時代が到来している」と異例の付言をしました。

 もともと、職務の公正な執行とは無関係に公務員の政治活動を刑事罰で禁止する国公法102条と人事院規則は憲法と国際自由権規約に違反します。

 東京高検が上告を断念して無罪判決を確定させるとともに、国会で国公法、人事院規則の問題点の徹底的追及、法改正が求められます。

 「守る会」http://www.geocities.jp/kokkou_horikoshi/index.html
 

10年3月19日 金曜日

高校無償化は朝鮮学校を含むすべての子どもに等しくすべき

                                                            2010年3月19日
内閣総理大臣 鳩山由紀夫殿
                                                          全国地域人権運動総連合
                                                                  議長 丹波正史
                                       
            高校無償化は朝鮮学校を含むすべての子どもに等しくすべき
                                       
 鈴木寛文部科学副大臣は18日の記者会見で、高校無償化からの朝鮮学校除外に懸念を示した国連人種差別撤廃委員会の見解に関し「文科省として除外するかどうか決めていない。見解は(除外を求めた)複数の政治家の動きについて指摘したものだと思うが、内容を精査したい」と述べた。
 政府は高校の無償化から朝鮮学校を除外する狙いもあって、4月から第3者委員会を設け教育課程を見定めるとしているが、すべての高校生に学ぶ権利を保障するための無償化が、その精神に逆行して新たな差別を生むことは許されない。日本が批准している国際人権規約や子どもの権利条約にも反する。
 国内に居住する外国人の子どもたちの教育を保障することは、国際社会の一員としての日本の責務である。とりわけ朝鮮学校で学ぶ在日韓国・朝鮮人の子どもたちは、国内で生まれ居住し、多くが将来も日本社会で生活していくことからも、政府が教育を保障するのは当然である。
 その際、子どもの民族的同一性を尊重することが重要である。子どもの権利条約は教育において、父母や子どもの文化的同一性、言語や価値観、居住国と出身国の国民的価値観などへの尊重を育成するとしている。
 これらの点から、朝鮮学校などの民族学校は子どもの教育に不可欠の役割を担っていることを認め、少なくとも日本の私立学校と同等に扱うべきである。高校無償化を、朝鮮学校の生徒にも適用すべきことはいうまでもない。
 日本の小・中学校、高校にあたる朝鮮学校は、朝鮮史や朝鮮語の授業を除いて、日本の学習指導要領に準拠したカリキュラムをとっている。朝鮮学校は都道府県に教育内容を届けており、都道府県は朝鮮学校に一定の助成をしている。ほとんどの大学が朝鮮高級学校卒業生に日本の高校卒業生と同等の受験資格を認めているのが現状である。
 今年は日本による「韓国併合」から100年。朝鮮学校で学ぶ在日韓国・朝鮮人は、日本の植民地支配下で徴用されるなどして、やむを得ず日本に渡った人びとの子孫である。日本政府には植民地支配の反省に立って、将来にわたって隣国と友好関係を築く努力が不可欠であり、在日の人びとへの政策、朝鮮学校への政策はその重要な分野である。
 朝鮮学校が北朝鮮と関係があるといって、拉致問題に責任のない子どもたちに報復まがいのことをするのは論外である。韓国国内の約50の民間団体は4日、在日韓国・朝鮮人の生徒が新たな差別を受けかねないとして、ソウル市内で朝鮮学校除外反対の集会を開き、無償化適用を求める声明を採択している。
 鳩山総理は「友愛」というが、1995年に人種差別撤廃条約を批准した立場からも高校無償化は朝鮮学校を含むすべての子どもに等しくすべく断固としたイニシアを発揮されたい。

10年3月19日 金曜日

今国会における民法改正実現を求めるアピール

以下、 日本婦人団体連合会の呼びかけに全国人権連も賛同しました。

今国会における民法改正実現を求めるアピール
2010年3月 

今国会における民法改正への期待が高まっています。法律で同姓を強制しているのは、世界でも日本だけであり、夫婦別姓での婚姻が認められていないため、多くの女性が望まぬ改姓、事実婚、通称使用などによる不利益・不都合、精神的苦痛を強いられ、法改正を待ち望んでいます。今国会に向けて、民法改正案の概要が発表されていますが、閣僚や政権与党の中にも反対を明言する議員があり、事態は予断を許しません。
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10年3月19日 金曜日

アイヌ政策 改善勧告 国連委が最終見解

冊子「アイヌ民族:歴史と現在ー未来を共に生きるために」
 小学生版と中学生版があり、全国の小中学校に配布されています。
 希望者には無料で送付してくれます。
財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構
 FAX (011) 271-4181
 e-mail ainu@frpac.or.jp

アイヌ文化 見て学んで-学校教育におけるアイヌ民族学習-
講師 清水裕二 副読本『アイヌ民族:歴史と現在(改訂版)』編集委員
http://www.frpac.or.jp/rst/sem/sem2004.pdf

アイヌ政策 改善勧告 国連委が最終見解公表 (03/18)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/international/221301.html
 国連の人種差別撤廃委員会(スイス・ジュネーブ)は16日、アイヌ民族に対する政策の実施状況を検証した「最終見解」を公表した。日本での政策の進展を評価する一方、2007年に採択された「先住民族の権利に関する国連宣言」が、限定的にしか政策に反映されていないと指摘した。
 同委員会は、政府がアイヌ民族を先住民族と認め、民族共生の象徴となる空間の整備や、道外のアイヌ民族の実態調査を進める「アイヌ政策推進会議」を設置したことを評価した。
 一方で、政府の会議などに参加するアイヌ民族の代表が少ないことを懸念。
  政治的自決権や土地・資源の権利などいわゆる「先住権」を含む46項目の「先住民族の権利に関する国連宣言」が一部でしか実行されていないとし、宣言内容の実現を検討する会合を設けるよう勧告した。

10年3月12日 金曜日

ハンセン病対策議員懇談会 参議院で早期の決議を

 2月24日の総会では、全療協から09年7月9日衆議院での「国立ハンセン病療養所における療養体制の充実に関する決議」(http://www.shugiin.go.jp/itdb_annai.nsf/html/statics/ketugi090709.html)を参議院では、より具体的な内容を盛り込んで早期に決議することが要望されました。

小池あきら・日本共産党参議院議員
http://www.a-koike.gr.jp/walkdiary/2010/02/post-163.html
ハンセン病対策議員懇談会総会に出席しました。
 
 全国ハンセン病療養所入所者協議会(全療協)や全生園入所者自治会のみなさんから要望をお聞きし、懇談をしました。
 国立ハンセン病療養所を国家公務員定数削減の対象から除外する、必要な職員・人員の確保など具体的な中身を盛り込んだ決議を参議院においてことや全生園の保育所設置に向けて土地の無償貸し付けをおこなうことなど切実な願いが出されました。
 地元東村山市や住民にみなさんの声も聞きながら全生園自治会は将来構想を策定されていました。園内の三万本の樹木の保存や歴史的建造物を保存する「人権の森」構想や、保育所を設置するなど開かれた福祉ゾーンづくりを盛り込んでいます。国有財産法のしばりから保育所設置のため国有地を賃借するために必要な1千万円もの賃借料が将来構想実現のための大きな障害となっています。
 歴史的経緯やハンセン病問題基本法の精神に照らせば保育園の無償貸与は当然です。現行法の中で努力をするのは当然ですが、現行法の枠内でそれができないなら法律を変える必要があります。国会が法律を作るのですから、各会派で呼びかけてその実現のために努力したいと思います。

10年3月2日 火曜日

久留米市立高校教諭の偽計業務妨害事件について

 福岡県地域人権運動連合会(会長 平塚新吾)、筑後地区地域人権運動連合会(会長 松崎辰義)は連名で、2010年3月1日、久留米市教育委員会あてに 「久留米市立高校教諭の偽計業務妨害事件についての真相の究明と事件を理由にした「同和」教育強化に反対する申入れ」を行いました。

 申し入れ事項
1 市立高校教諭による脅迫、偽計業務妨害事件の背景をふくむ真相の徹底的な究明を求める
2 事件の善後策については、外部の団体等に判断を委ねるのではなく、あくまでも市教委及び学校が主体 的に対処されたい
3 事件を理由にした「同和偏重」の教育及び研修にならないよう厳に戒められたい
 
申し入れの理由
 今年2月22日付け、新聞各社の報道によれば、久留米市立高校の生徒指導主事の教諭(37)が生徒指導のトラブルから生徒の保護者を脅迫する文書(封書、はがき)を送付し、市教委に17回も対策会議を開かせて本来の業務を妨害させたとして「脅迫と偽計業務妨害罪」で逮捕された。文書には「どうしてきさまのような部落が偉そうにできるのか」と保護者を中傷するものもあったとされる。
 生徒指導をめぐる教諭と保護者の間で、どのようなトラブル、感情の対立があったとしても反社会的な言辞を弄し、相手を誹謗中傷する卑劣な人権侵害行為は許されるものではない。今回の事案は、教諭による保護者への人権侵犯であり、学校関係者に与えた影響は小さくない。
 事件の真相はまだ明らかにされていないが、新聞記事等で聞き及ぶ範囲で類推するに、校則違反の喫煙行為を指導した生徒指導主事の教諭に対し、保護者側が指導の対応に不手際があったと逆に学校側に抗議し、校長らに謝罪させたことに「それでは仕事はできない」と憤慨した同教諭が、匿名の文書で保護者を脅迫し、県教委らに不満を訴えたものといわれている。
 喫煙問題が発生したのは2009年2月頃で、学校側の謝罪で「トラブルは解決したと思っていた」(校長の談話、朝日新聞2月22日)。しかし、その直後から昨年12月までに同教諭は15通の封書、はがきを同高校や同僚教諭、県教委(市教委)に送りつけ、トラブル相手の保護者には昨年9月から10月にかけて封書とはがき計6通を送りつけて脅迫した。
 今後、学校と市教委は自主的主体的に生徒指導とトラブルの背景などの事実関係を徹底的に明らかにし、学校教育の観点から今後の生徒指導に役立つよう解明にあたるべきである。その際、一部の外部運動団体からの一切の介入も排除されなければならない。今回の事件は、あくまで学校の教育課題として教育の中立性を確保し対処すべきである。市教委の適切な指導及び対処を求める。
 最後に、今回の事件は、学校現場の事件であることから一部の運動団体から「同和教育行政の形骸化」として「同和」教育・研修の徹底をもとめる声が早速、新聞紙上で紹介されている。
 市教委は23日に市立の小中高66校の校長会を臨時に開き、席上、堤正則教育長は「部落差別を利用して市民を脅迫するなど、あるまじき行為で断じて許されない。教職員への人権・同和研修が十分でなかった」として、「今後、人権教育の研修、啓発の再構築を図っていく」と「同和」偏重の教育・研修の強化を示唆したといわれている。
 この教育長の訓話は、事の発端を隠蔽し問題のすり替えに他ならず、学校側が自主的教育的に生徒指導を行うことが困難となり、同和問題にかかわる啓発、研修を一部運動団体いいなりに行うことで、学校現場はもとより市民をして「同和はやっかいな問題」と敬遠させることにしかならない。今日、社会問題として基本的に解決をみている同和問題の到達を後退させることになり、決して容認できない。
 学校現場で起こったことは、いかなることでも学校の主体と自主性で解決すべきで、たとえ同和問題にかかわって児童生徒及び教諭等に問題行動があった場合でも、同和問題を聖域化せず、学校が教職員の総意をもって主体的で適切に対処すべきである。教育行政の役割は学校が自主的主体的教育的に導き出した結論を尊重し、地域社会や保護者とのあいだで納得と合意ができるよう条件整備を行うことこそとるべき立場である。
 以上のことを強く申入れる。