(首相官邸、内閣府あて)
菅義偉首相による学問の自由を侵害する日本学術会議会員推薦者の任命拒否に関し、違法な秘密裏の法解釈適用に強く抗議するとともに、拒否理由を明らかにし、あらためての任命を求める。
    2020年10月5日
  全国地域人権運動総連合常任幹事会

 10月1日、日本学術会議の総会において、山際壽一前会長は、学術会議が推薦した新会員のうち6名が菅義偉首相により任命を拒否されたことを明らかにした。
 日本学術会議は、わが国の科学者を内外に代表する、政府から独立した機関であり、同会議の会員は、任期6年で、その半数が3年ごとに改選されるが、改選にあたっては同会議の推薦に基づき首相が任命することとなっている。会員に推薦された者をそのまま任命することは、現在の任命方式に変更される際の国会審議における政府答弁でも明言されていた。このことにより同会議の独立性が一定担保されてきたものであり、加藤官房長官の「政府に一定の監督権がある」との説明は、1983年の国会質疑で「監督権はない」との政府答弁を否定するものであり、容認できない。
 しかし政府はこの間、首相の任命拒否が可能であるとの解釈変更を秘密裏に行っていたことが明らかになった。これは解釈権の枠を超えた、立法権の簒奪ですらある。
 政治的恣意的な判断によって会員任命が左右されるようになれば、学術会議は政府の御用機関となり、日本の学術が政治に従属させられることになりかねない。戦前、日本の学術が戦争に動員された反省を踏まえ、政府からの独立を保障しつつ、設けられたのが現在の日本学術会議である。学術は、人類共通の財産として営まれるものであり、決して権力者のものではない。
 今回の菅義偉首相による任命拒否は、学問の自由を定めている日本国憲法の明確な蹂躙であり、憲法改悪による戦争体制構築に向けた安倍政権の官僚支配、メディア支配、国政私物化、国会軽視を引き継ぎ、学術研究管理、思想統制、国民管理へと進む差別と分断の露骨な現れである。
 私たちは、このような暴挙を行った菅義偉首相に強く抗議するとともに、日本学術会議法の定めどおりに推薦された6名の会員の任命拒否を直ちに撤回することを強く要求する。

(日本学術会議あて)
真相解明と6名の任命を行うよう政府に働きかけることを求める。