2008年8月18日
法務大臣
保岡興治 殿
                                          全国地域人権運動総連合
                                             議 長  丹波 正史

 私たちは、日本国憲法で保障された国民の言論・表現の自由を制約し、政府からの独立性や準司法的権限を有する機関を構想する国連パリ原則に反して「差別救済」を唱える一部団体の権益を擁護する「人権擁護法案」(人権侵害救済法)に反対します。

 貴殿は8月1日、福田改造内閣において再び法務大臣(第69代、第81代)に就任されたことから、懸案である「人権擁護法案」(人権侵害救済法)について、全国地域人権運動総連合(略称、全国人権連)の立場をあらためて表明し、慎重な対応を要請するものです。
 この間、「人権侵害を救済する案の検討を鳩山法務大臣からの要請に応え」太田誠一氏が会長であった自民党人権問題等調査会は、「話し合い解決」等による人権救済法(案、5月29日太田私案提示)も俎上に会合を重ねましたが、包括的網羅的な対応ではなく個別法の改正で充分との意見がだされるなど、2005年3月来の「法の根幹」に関わる問題点があらためて浮き彫りになっただけで、自民党内での合意は形成されていません。
 第169国会中、6月20日の第16回調査会が最後でしたが、太田前会長は「骨格に沿って細部はこうなるということを詰めて、秋の臨時国会の招集後にお示しするつもり」と、自身のブログで勝手なまとめをしています。
 このような経過で迎える臨時国会ですが、法務省は自民党人権問題等調査会内で、立法根拠そのものをはじめ太田前会長のまとめ(論点整理)にも合意が無く、調査会の新人事も未定のもと、拙速な対応は謹んでいただきたい。
 人権擁護法案は2002年3月に閣法として参議院に提案され、3度にわたる継続審議ののち、国民の深刻な権利侵害の救済に役立たない事などが明らかになり、2003年10月衆議院の解散にともなって廃案になったもので、人権擁護(救済)に関する法案論議を行うのであれば、自民党に要請するのではなく、法務省に新たに審議会を設けるなりして根本からの議論を再構築すべきではないでしょうか。
 法務省としては、政治的思惑が先行する包括的人権に関する論議に与せず、現行人権擁護体制の充実を図りつつ、新たな検討の道筋を組み立てられたい。
 以上のことを大臣就任にあたり、是非ご検討を賜りたく要請致します。