受診遅れで71人が死亡、背景に受診抑制と無保険
昨年、24都道府県で71人が受診遅れで死亡していたことが判明。これは、全日本民主医療機関連合会(民医蓮)の調査でわかった数字で、公民で設置されている診療所などを含むすべての医療機関で調べた場合、もっと大変な状態にあるのではないかと思われる。調査は、民医蓮加盟の1767施設で行われた。受診遅れで亡くなった人たちは年々増加している。
受診遅れの背景には、以前から指摘されている国民健康保険料(国保)滞納による「無保険」や保険証はもっていても医療費の自己負担分を支払うことができなかったり、医療機関の窓口で全額支払いが求められる国保の資格証明書だったり、短期保険証だったりと、様々。この中には、様々な事情から路上生活を余儀なくされている人々も含まれる。
政治の失政と大企業の労働者いじめが、非正規労働を大量に生み出し、失業者を激増させた。その結果、人々は「物を買わない」と「物を買えない」、「様々なものに投資できない」状態に陥り、一部の人々を除いて全体的に景気減速となった。当然、税収も減少し、国・県・自治体の財政当局などは、裁判所の差し押さえ令状などを含む、あの手、この手で、取り立てををはじめている。ちょっとした自治体では、保険料に絡む差し押さえだけで、年間1億~3億となっている。
自治体の担当者がいうように、税金や保険料を意図的に滞納し高級車や遊興費に回している悪質な滞納者がいることも事実だろう。だがそれは全体ではない。今回、判明した71人の受診遅れは、「払いたくても、払えない」といった経済的困窮者だったのだ。
民医蓮は、もはや「日本が世界に誇る国民皆保険制度は崩壊している」と指摘。国の施策のあり方の根底に「国民の生命、財産の保全」を謳った「日本国憲法」の精神が、いま生きているのかが厳しく問われているのではないか。