2012年3月1日
全国地域人権運動総連合
議長   丹波 正史

新たな人権救済機関の設置動向に係わって、
立法根拠そのものから国民的な検討と議論に附することを求めます

現在、法務省は、新たな人権救済機関の設置にかかわる法案を、今通常国会に提出する意向を示し作業を進めています。
2003年10月「国会解散」にともない廃案となった人権擁護法案は、審議会答申を踏襲し次のような問題を持っていました。
①政府からの独立性など国連が示す国内人権機構のあり方(パリ原則)とは異なる、
②公権力や大企業による人権侵害を除外しており、もっとも必要性の高い救済ができない、
③報道によるプライバシー侵害を特別救済手続きの対象としており、表現・報道の自由と国民の知る権利を奪う、
④「人権」や「差別」についての明確な規定なしに、「差別的言動」を「特別救済手続」として規制の対象としたことが、国民の言論表現活動への抑圧であり憲法に抵触する、点です。
法務省が昨年12月に示した法案「概要」でも、③を除き、何ら解決されていません。
特に、人権救済機関の所管について「基本方針」「概要」は法務省としましたが、私たちや多くのマスコミも内閣府の所管を求めています。基本骨格となる重要な点は5年後見なおしとすべきではなく、議論を尽くす必要があります。
さらに国民間の言論や表現・出版に係わる領域に「差別助長行為」などとあいまいな定義をもって介入することは国民の言論活動を萎縮させるものです。特に規制を掛ける規定を設ける必要はありません。人権機関による権限乱用を防止するためには、救済対象を国民の平等権侵害問題にして、取り上げる項目の列挙が必要であると考えます。
よって、新たな人権救済機関の設置に係わっては、人権施策推進審議会答申そのものもが同和対策終結以降を臨んだ事から来る重大な制約を持ち、「差別と虐待」からの救済を主としたことから、国際社会の動向や国民の願いとかけ離れたのであって、ここは原点に立ち返り、立法根拠とするそのものから国民的な検討を行うことを求めるものです。