全国人権連も組織加盟している
国際人権活動日本委員会
   代表委員 吉田好一氏( 07年04月09日,「赤旗」寄稿)
 「拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約」(以下「拷問禁止条約」と略)を日本政府が批准したのは一九九九年六月二十九日で、七月二十九日に国内で効力を発しました。5年遅れの報告
 この条約の一九条では、国内で効力を発した後一年以内(二回目以降は四年目ごと)に条約で設置された拷問禁止委員会に政府報告書を提出する義務があります。日本は二〇〇〇年七月の期限から五年遅れてようやく〇五年十二月に第一回報告書を提出しました。
 政府報告書は全文A4判八十四㌻ですが、そのうち四十五㌻が条文の引用で残り三十九㌻の半分以上が引用した条文の趣旨説明です。憲法、刑法、刑事訴訟法等関連法規・規則を引用し、拷問は禁止され、それを行ったものは処罰されると繰り返し述べています。名古屋刑務所事件など例外的事件を除けば、まるで日本には「拷問」はないかのようです。
 「拷問」の定義もあいまいで、「肉体的拷問」以外は「拷問」ではないかのようです。拷問禁止条約でいう「拷問」とは、「身体的なものであるか精神的なものであるかを問わず人に重い苦痛を故意に与える行為」です。
 日本の警察や検察が当然のように行っている自白を迫るさまざまな脅迫的言動が、条約にいう「非人道的で品位を傷つける取扱い」以外のなにものでもないことは明らかです。日本の警察・検察では、拷問禁止条約でいう「拷問」は日常茶飯に行われ、そうして幾つもの冤罪(えんざい)がつくられてきたのです。

個人通報制度は
 政府は条約二二条による個人通報制度の受諾宣言を行っていません。また、拷問を防止するために専門家で構成する防止小委員会を設立することや国内にも防止機構を設立することを定めた同条約選択議定書(二〇〇二年制定)も批准していません。受諾しない理由として、「司法権の独立を含め司法制度との関連で問題が生じるおそれがあり」と述べています。
 政府は「日本には救済制度がある」と言いますが、再審の扉は重く固く閉ざされ、救済制度にはなっていません。拷問などの不当な取り調べが行われている「代用監獄」はいっこうに廃止せず、「取り締まりの可視化」についてもきわめて消極的です。

カウンター報告
 日本政府報告にはほかにもさまざまな問題点があります。戦前の治安維持法下での拷問についても反省をしていません。報告の審査に際して、拷問禁止委員に日本の現実と司法の実態を訴え、日本政府に対して的確な勧告などを出すよう、国際人権活動日本委員会、国民救援会、再審・冤罪事件全国連絡会、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟の四団体で政府報告に対するカウンターリポートをまとめ、三月末に提出しました。
 拷問禁止委員会による日本政府報告書の審査は、五月九、十の両日にジュネーブの国連人権高等弁務官事務所で行われます。前日の八日には拷問禁止委員のメンバーとNGО(非政府組織)との会合もあります。
 これに向けて国民救援会と国際人権活動日本委員会などから代表が参加する予定です。日弁連などもリポートを提出するとともに参加を予定しています。