2012年8月2日

滝実 法務大臣あて

全国地域人権運動総連合

議 長  丹波 正史

 

人権委員会設置法案の閣議上程に反対です

 

 マスコミ報道では、民主党の「人権政策推進議員連盟」の中野寛成会長らが1日、野田佳彦首相と官邸で会い、人権救済機関「人権委員会」を法務省の外局に新設する人権救済機関 設置法案の今国会成立に向けて、早期に閣議決定するよう求める要請書を提出。同席者によると、首相は「頭の整理ができたので、しっかりと対応したい」と答えた、といいます。

 2002年以来、成立を求める執拗な動きが続いていますが、以下の根本問題が何ら解決されていないもとでは、拙速な閣議決定、国会提案はすべきではありません。

①  公権力や社会的権力(大企業など)こそ人権侵害の元凶であるにもかかわらず、この間題を公務員の人権侵害に倭小化し、国民の言論・表現、内心の自由や知 る権利など、いままで国民間の問題で踏み込まなかった分野に、行政機関が5年後見直しと言って調査権限や罰則をもって介入するものです。

② 同和問題に係わる結婚・交際問題のように、この分野で合意されてきた政府見解では、何が差別かを判定することは困難であり、法律などで罰したり規制することは、かえって啓発に反し差別の潜在化を招くと捉えていたが、この法案は明らかに問題解決に逆行します。

  結婚・交際に際して、「差別」との断定のもとに権力が介入を行うことは、国民の内心の自由を侵しかねず、意に反する婚姻の強制など憲法が保障する婚姻の自由への行政権力の介入となり、結果的に人権を侵害し部落問題解決をも阻害するものです。

③  あくまで表現には表現で対抗することが近代社会の基本であり、定義が困難である「不当な差別的言動」「差別助長行為」などの表現行為に対して、曖昧な概 念で対応を行うことは、言論表現の自由を侵害し、しかも自由な意見交換のできる環境づくりによる部落問題解決にも逆行します。

 

 このように、国民の希望に反し人権侵害を生み出しかねない法案は、有害でしかありません。国民的検討ができる新たな枠組みを設け、そもそもから議論ができるようにしていただきたい。