「岡山県水平社創立100周年記念のつどい」5月7日
「岡山県水平社創立100周年」アピール
県民のみなさん
人間の尊厳・自由・平等を求めて「人の世に熱あれ、人間に光あれ」と結ばれた宣言で知られる全国水平社は1922年(大正11)年3月3日、京都市岡崎公会堂で創立されました。その1年余り後の1923年5月10日に岡山県水平社が創立されました。今年は100周年です。当時は大日本帝国憲法、絶対的天皇制の時代でした。創立当時から結社の自由、表現の自由は制約されていました。米騒動などにみられる社会運動の大衆化に伴い、国家は1925(大正14)年に治安維持法を成立させます。私たちは、国家権力の融和分裂政策、直接的な弾圧などときびしく対決して、部落差別解消にむけて組織を誕生させ、運営してきた当時の若き諸先輩の方々に、深い感謝の念を抱いています。
県民のみなさん
戦後、基本的人権の尊重を定めた日本国憲法のもと、部落問題の解決を求める運動が民主的な教育運動や各種の民主運動と連携しつつ発展しました。高度経済成長による人口移動と産業構造の変動は地域での古い因習を解体し対等な人間関係形成の条件となりました。国による同和対策事業の実施は、住環境や職業や教育における格差を是正し、差別の解消と社会的交流の促進に大きく役立ちました。同和行政施策の実施過程で利権や暴力と結びついた逆流が一部に生まれました。それと向き合う中から格差是正、差別解消、部落内外の交流などを柱に、部落問題にふさわしい解決のあり方が「国民融合」論として提起され、運動の前進とともに行政のあり方も改善されてきました。特別施策の廃止、一般行政水準の引き上げの運動も展開され、残る問題は一般行政施策と、人権尊重・民主主義定着の運動に引き継がれるようになりました。現在の人権連につながる組織は、名称変更を経ながら、日本国憲法を暮らしに活かす運動と固く結び付ける中でこそ部落問題解決が果たせると、普遍性をもった人権確立の方針をもって進めてきました。
県民のみなさん
今日は、部落問題は社会的、経済的には解決されている時代です。しかし、今日の現状を意識的に無視する「部落差別解消法」が2016年に制定されるなど、「部落問題」を政治的に利用される課題はなお残されています。貧困や格差、ジェンダー問題、LGBTQや在日外国人の人権保障問題、年齢・特定の「能力」や障害・思想などによって人を差別し排除する問題が、社会から根絶されたとは言えず、広がりと深刻さを増しています。個人の生活や労働、人間としての尊厳が脅かされ、暴力や紛争、社会不安などを引き起こしている現実があります。国政は外交、安保政策を大転換させ、軍事関連予算の大幅増額、大増税を画策しています。新型コロナウイルス禍は女性や子ども、高齢者などをふくむ社会的弱者を直撃し、新自由主義がもたらした社会保障の後退や自己責任論の誤りなど社会の脆弱さが明らかになりました。
県民のみなさん
こういう時期だからこそ、「侮辱と迫害」に対する怒りから集団運動を組織し、部落問題解決につながる人権理論を発展させ、今日の社会でさらに日本国憲法が花開く社会をめざすとりくみにつなげてきた人びとの100年の歴史、その重みを改めて感じています。岡山県水平社創立100周年を機に、すべての人の人権が尊重され、民主主義が根付いた、平和な社会の実現をめざし、地域から新たな連帯の輪を広げていくことを、心から呼びかけます。
2023年5月7日
岡山県水平社創立100周年記念のつどい
参加者一同