2007年10月2日
 福岡県議会議長 貞末利光 殿

教育公務員の服務管理の適正化等をもとめた2007年3月28日付の福岡県教育委員会通知の徹底をもとめる陳情

 団体名 福岡県地域人権運動連合会
 代表者 会長 平塚新吾
 団体住所 〒811-3406 宗像市稲元1164の2   電話

陳情要旨

1 教育公務員の服務管理の適正化をもとめた福岡県教育委員会の「07年3月28日通知」等の指導を徹底し、「人権・同和」に偏重した児童生徒支援加配教員の目的外使用の実態を抜本的に是正すること

2 福岡県が教育行政の主体性・中立性を確立するために、教育委員会と民間団体との協議内容・要求項目を県民に公開、情報を開示すること

陳情理由

1 児童生徒支援加配教員の75%が「同和優先」の目的外使用の実態

今年度の福岡県の児童生徒支援加配定数は429人です。昨年度(2006年度)の児童生徒支援加配定数(以下、支援加配)は438人でした。今年度は9人の減少です。昨年度まで福岡県の支援加配の服務状態は、文部科学省通知(定数加配を行う上での留意事項―支援加配は、従来の同和加配とは異なり地域を限定して加配するものではなく、児童生徒の状況に着目し、学習指導上、生徒指導上又は進路指導上特別の配慮を行う必要に照らして措置するもの)を否定する「同和優先利用」という目的外使用の実態が常態化していました。
昨年度、私たちなどが情報開示や独自調査で、県下の市町村配置の児童生徒支援加配教員(以下、支援加配)の勤務実態などを調べたところ、438人中331人(75・5%)が目的外使用の人権・同和教育担当者を兼務していることが分かりました。
私たちは今年1月30日伊吹文明文相(当時)に「支援加配の目的外使用の是正と適正な活用」を申入れ、具体的に①支援加配の配置及び服務が同和教育推進等(目的外使用)になっている実態が顕著②支援加配が同和教育研究団体等の事務局業務等に従事している実態③教師は教育公務員としての服務に専念し、勤務時間中の研究団体等の社会運動との区別を明確にし、教育の中立性を確保させることをもとめました。
2 市町村教委、学校現場に徹底していない県教委07・3・28通達

私たちからの具体的で大量の資料提供で文科省は、福岡県教委に再三にわたり実態調査を指示。詳しい実態の把握と善後策の報告をもとめ、改善が見られない場合は「支援加配定数の大幅な削減も辞さない」と指導しました。
文科省の是正指導に県教委は、今年の3月28日付けで教職員課が改善の通知を明らかにしました。通知は①「教育関係団体を通じた業務等の服務管理について」(18教教第3709号)と②「教員加配定数の活用計画等について」(18教教第3710号)です。同通知で県教委は「通知による取組が行われていない場合や活用の状況によっては、翌年度の配置は行わない」などとする二つの改善通知を市町村教委と県立高校長に送付、是正指導しました。
しかし、教職員課の二つの改善通知は、年度末の混乱期であったため市町村教委に周知徹底されず、小・中学校の校長たちも人事異動や新年度の編成等で一番、多忙な時期とかさなったことから、改善通知の存在自体、知らないのが実態です。「年度末の忙しいとき、そんな大事な方針を出しても現場はそれどころではない」(市教委や校長)と反発さえあったほどです。
加えて県教委は年度末に、福岡市と北九州市の両政令市教委には通知文書を送付していないことがわかりました。北九州市の教職員課の説明では新年度に入った4月16日、県教委主催の学級定数等の説明会の席上、「参考資料として県からもらった」というのです。参考資料の扱いですから北九州市教委は小中学校の校長たちに、支援加配の適正活用について、指導はもちろん二つの通知文書も配布していません。
県教委の改善通知が県下の市教委に徹底されていないことが、6月15日の北九州市議会定例会一般質疑の教育長答弁が典型的です。議員が「児童生徒支援加配教員の実態と是正について」市教委の見解をただしたところ、大庭清明教育長は「学校の人権教育担当には児童支援の業務とつながりが多いことから支援加配59人中49人が(人権教育担当を)兼務(兼務率83%)している」と答弁、市教委が公然と支援加配の目的外使用を容認しているのです。

3 まだまだ、異常に多い支援加配教員の学外出張の実態

行橋市では、小・中学校の支援加配の配置定数は今年度小学校で1削減の7、中学校は5の合計12人です。同市では今年度の人権教育担当教員は17人。このうち支援加配が兼務している学校は小学校3、中学校2の5校です。
 今年5月の支援加配の出張状況調査では、行橋中の支援加配教員の延べ11日、稗田小の支援加配の同10日、今元中と椿市小の同9日、行橋小同8日、泉中の同7日などとなっています。出張内容は、行政が解同地協に管理を委託している行橋京都文化センターで毎週月曜日開催を定例化している「市人権教育研究会」に「研修会」名目での出張です。
ところが、各学校の出張状況の記載では出張会議名は人権教育研修会だったり、人権「同和教育担当者」会であったり、人権教育「研修会」担当者会とあったり、同じ会議に出張していても会議の名称は学校ごとにばらばらです。実態は市同研の事務局会議ですから、参加者は名称にこだわっていないことが、このことから窺えます。行橋市の支援加配の出張は昨年度の20日前後から半減しましたが、内容はまったく改善されていないことが、これらのことからも明らかです。
支援加配の目的外使用の実態はこのように北九州市や行橋市だけでなく、田川市郡、筑紫野市、朝倉市郡、久留米市、八女市を含む県南の筑後地区など、県教委通知通り完全に改善されていない傾向にあります。

4 是正がすすまない背景に、解放同盟からの解放教育運動の強要がある

目的外使用の是正がすすまない背景に部落解放同盟などの動きがあります。解同中央本部の機関紙『解放新聞』(07年7月2日号)は、支援加配について「同和加配は今日、児童生徒支援加配と呼び名を変えているが特別な指導を必要とする学校に配置され、その役割は従来と大きく変ることはない。・・差別の現実から深く学ぶという解放教育運動のスローガンをあらためてかみしめ」ることを強調しています。解同の主張は、支援加配はいまでも旧同和教育推進教員の任務となんら変っていないから「差別の現実を深く学」ばせ、解放教育運動の尖兵として活用しなければならないというものです。
その場合、支援加配イコール旧同推教員というのはあまりにも露骨ですから、福岡県では解同は「人権教育担当者」の衣を被せ、支援加配教員を活用しようとしています。支援加配の活用が文科省の三つの留意事項に抵触するという批判に解同は、別途、人権教育担当者を各学校に配置させ、支援加配にかわる解放教育運動の尖兵にしようとしています。
その先取りが前出の北九州市教委の6月15日の本会議答弁です。北九州市の今年度の支援加配の実態は、小・中学校で58人中、49人が昨年同様に人権教育担当を兼務しており、目的外使用の状況は変っていません。県教委の指導の徹底が不十分ということの証左です。

5 県教委と民間運動団体及び教育団体との協議内容の情報公開は不可欠

県教委は、07年3月28日通知を実効あるものとして指導を徹底するためにも、解同などの民間運動団体、人権・同和教育研究団体等との協議内容、要求項目等を県民に情報公開すべきです。人権問題にかかわる事項は広く県民に公開し、多くの県民の関心を喚起し、世論にしてこそ問題の早期解決につながるものと私たちは考えます。
 以上、文科省の指導及び県教委通知に違反する支援加配教員の「人権・同和」に偏重した目的外使用の実態を改善し、教育公務員が学校外の一民間運動団体及び教育研究団体等の運動に活用されない旨、公教育と社会・政治運動を明確に区別することを貴議会が県教委に求められることを陳情するものです。