人権侵害救済法案は拙速な国会提案ではなく、立法根拠そのものから国民的検討と議論に附すこと
全国人権連は、以下の報道と関わり、2月4日に丹波正史・議長名で法務省関係大臣(大臣、副大臣、政務官)に根本からの論議を要請(下記申し入れ)しました。
鳩山首相、人権侵害救済法案の早期提出表明 言論統制の危険性も
2010.2.3 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100203/plc1002032019014-n1.htm
鳩山由紀夫首相は3日の参院本会議での代表質問に対する答弁で、民主党内で検討されている人権侵害救済法案(旧人権擁護法案)について「できる限り早期に国会に提出できるよう努力を約束する」と表明した。また、「差別問題をはじめ数々の深刻な人権問題が後を絶たない。人権救済機関の創設は非常に重要だ」と必要性を強調した。民主党の松岡徹氏の質問に答えた。(以下略)
(申し入れ文)
2003年「郵政解散」にともない廃案となった人権擁護法案は、そもそも次のような問題を持っていた。
①政府からの独立性など国連が示す国内人権機構のあり方(パリ原則)とは異なる、②公権力や大企業による人権侵害を除外しており、もっとも必要性の高い救済ができない、③報道によるプライバシー侵害を特別救済手続きの対象としており、表現・報道の自由と国民の知る権利を奪う、④「人権」や「差別」についての明確な規定なしに、「差別的言動」を「特別救済手続」として規制の対象としたことが、国民の言論表現活動への抑圧であり憲法に抵触する、点である。
千葉景子法務大臣は9月17日未明の就任記者会見で、人権救済機関を内閣府の外局に設置することを内閣提出法案で早急に実現したい旨発言したが、民主党が05年8月1日に衆議院に提出した「人権侵害による被害の救済及び予防等に関する法律案」は、旧政府法案の焼き直しに過ぎず、人権侵害救済の対象は差別と虐待が中心で、地方人権委員会も独立性が担保されておらず、旧政府案同様に問題がある。
あるべき新たな人権侵害救済法案は国会で全会一致の可決となるよう、人権委員会は権力や大企業による人権侵害のみを特別救済の対象にし、報道や表現規制をその対象からはずし、言論や出版の領域には踏み込まず言論の自由を尊重し、国連パリ原則にのっとった独立性と実効性が確保されるものにされたい。
こうした国内人権機関の設置に関わる議論を国民公開で行えるよう、手立てを講じられたい。