特別決議・時代逆行の「『部落差別』固定化法」断固阻止に奮闘する

 全国人権連の前身である全国部落解放運動連合会時代から、私たちは「これ以上、同和に関する特別法はいらない」と全国各地で署名運動や各界各層との懇談会等を旺盛に展開し、当時の所管官庁であった総務庁地域改善対策室との交渉でも、特別立法の廃止を求めてきた。
 こうした運動の成果で国における「同和」に関する特別法は、「地域改善財特法」を最期とし、5年間延長された後、2002年3月末で失効した。これにより「同和」を理由とした施策の法的根拠は無くなった。
 2002年の特別法の終了は、実態的格差是正が進み、部落問題に起因する課題が概ね解決してきたという認識が関係団体や政府・行政及び専門家の中で醸成共有され、「これ以上同和対策を行うことは解決に役立たず、誰が同和関係者か判断が困難」という状態に至るほど変化してきたことが理由であった。
 しかし、「解同」と深い関わりをもつ幾つかの県や自治体では、その後も「人権宣言」「人権条例」などと併せて、2000年に成立施行されて「人権教育・啓発推進法」を根拠に「同和対策事業」を継続するなど部落問題解決の今日的現状と相いれない誤った行政施策を継続させるなど、部落問題解決の歴史に逆行する誤った行政も行われている。
 国の段階でも2002年以降、「同和」に関する法的根拠がないままに、一般対策に工夫を加えた事業名目で、「同和関係者」の雇用保険給付延長制度や児童生徒支援加配教員の偏向配置などを続けており、全国人権連は政府各省交渉の中で、正当な根拠をもたない事業の継続は止めるべきだと何度も是正を求めてきた。
 昨年9月から大問題となった「集団的自衛権行使容認」と「戦争法」問題が国民的大反対と戦争法廃止の一点で野党結集が具体化してくる中で、今回の「部落差別の解消の推進に関する法案」が突如として自民党内から急浮上し、国会会期末に衆議院法務委員会に自公・民進の共同提案の形で提出された。
私たちは、自民党法務小委員会委員と衆議院法務委員35人全員へ反対意見書を送付した後、5月24日の国会緊急行動で議員事務所を訪問、道理も立法根拠もない新法案を成立させないよう申し入れ、衆議院議員会館内で決起集会を開いた。
 この法案は、「部落差別」の明確な定義もないまま、国と地方自治体の責務に加え、第6条に「実態調査」を行うことを明記しているが、今日的解決の視点からみても言語道断である。「実態調査」は、部落問題が社会問題としては基本的に解決している中で、政府、自治体があらたに「部落」「部落民」なるものを選別するもので、重大な人権侵害行為に他ならない。
更に今回の法案は部落問題の固定化、永久化につながる恒久法の形態をとっている点も大問題である。
 現在、「人権教育・啓発推進法」と関連して教科書記述と賎称語の取り扱いをめぐって、学校現場や解放教育なるものが展開されている地域で様々な矛盾や問題が発生している。こうした点の見直しこそ求められているにもかかわらず、それを放置した上に今回の新法上程と成立策動は、多年にわたる部落問題解決の営みを無視して歴史の歯車を逆転させようとするに等しい良識を欠くもので、新法など論外であり、断固反対、全力をあげて阻止することを決議する。

2016年6月12日
全国地域人権運動総連合第7回定期大会