「こんな内容を公開討論して開くことが素晴らしい。ぜひとも広げてほしい」。全国地域人権連は「地域社会における権利憲章」公開検討会を2月2日、京都市内で行いましたが、冒頭の発言は、公開討論会の開催を知って初めて参加した男性が発した一言。全国人権連が提唱しようとする「地域社会における権利憲章」(「地域権利憲章」)が、多くの人々に共感を得ることができることを確信できた検討会となりました。

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「分断的貧困」からの克服めざす地域住民運動を

 今回の公開検討会の開催について、全国地域人権連の丹波正史議長が説明しました。
丹波議長は、人権連の前身の組織である全解連(全国部落解放運動連合会)時代から約5年間、地域社会で人権と民主主義、住民自治の確立をはかるために「地域権利憲章」の制定を検討、今年6月に開催を予定している第3回の全国人権連大会で「地域権利憲章」の採択にむけて各方面からのきたんのない意見を聞き、再検討し、成文化していきたいと趣旨を明らかにしました。
 その上で、丹波議長は今日の地域社会をめぐる情勢について触れ、①少子、高齢化社会の中で「限界集落」といわれる地域が急増し、廃村しなければならないところもでてきている②貧困と格差が広がり、全国平均で6・5世帯に一世帯が生活保護基準以下の所得で生活している実態を挙げ、これらの克服のためには、「『分断的な貧困』ともいえるよう個々人が支配され、分断されている中で、地域社会でどう国民が手をつなぎ、豊かに地域運動を住民とともにつくっていくのか」と討論をすすめるための課題を提示しました。

「地域権利憲章」の意義と運動の目的を明らかに

 全国人権連の新井直樹事務局長が、人権連が検討してきた「地域権利憲章」第3次案の経過について報告しました。
 新井事務局長は、かつて全解連時代には、私達の運動の目標に照らし合わせて、綱領的文書や宣言などを採択し、運動の方向性を明らかにしてきたことから、地域社会での人権と民主主義、住民自治の確立をめざす運動の理念、原理を明らかにするとともに政策的なものにしていきたいと「地域権利憲章」の性格を述べました。
 作成にあたって、労働組合や民主団体から出されている教職員や自治体労働者、納税者などの権利憲章をめざす取り組みやEU憲章なども参照してきたとし、「地域権利憲章」が我が国はじめて地域社会と居住者を対象にした「権利のカタログ」であり、その制定が全国人権連の運動目標であること、特に、検討すべき内容として、①地域人権とはなにか②地域住民の具体的な権利のプログラムの整理③「地域権利憲章」の意義と運動の目的の三点を示しました。

各界からきたんのない意見が出される

 大阪経済法科大学の村下博、奥山峰夫両教授によって討論は進められました。
 立命館大学の石倉康次教授(社会福祉)、同志社女子大学の河野健男教授(社会学)、平安女学院大学の中林浩教授(都市計画学)からは、各分野の専門者として「地域権利憲章」について検証、その積極的な意義を評価した上で、概念規定や文章上での洗練度については、検討が必要と指摘しました。
 また、「WEBマガジン福祉広場」の井上吉郎編集長は、概念上、「地域」と「人権」を同一して並べることが果たしてよいことなのかと指摘、「権利」の内容に触れ、人権連が「困難を抱えた人」、「不利な人々」の味方であることを示すことが必要と述べました。
 全国商工団体連合会の伊藤邦雄京都府連会長は、同連合会が提起している「納税者の権利憲章」について、消費税増税と大企業、資産家への優遇税制が貧困と格差を拡大し、税金を能力に応じて支払うという民主的な税制に反していることを具体的に分かりやすく説明し、「権利憲章」制定運動そのものが組織の活動に生命力を与えることを討論でも示しました。

「地域権利憲章」を運動の生命力に

 5氏の発言後、会場からいくつかの意見が出されました。
 島根県の片寄さんは、前文を設けて制定運動についての表記が必要であり、「地域権利憲章」の位置づけ、性格を明確にすべきではないかと述べ、兵庫県の森元さんは、「地域権利憲章」は、広く地域社会の人々に受け入れられるものであり、とくに、人権連が地域での共同型の住民運動をネットワークとしてひろげるための原理、原則を示すものにすべきと話し、広島県の岡本さんは、「限界的集落」や道州制導入論議がなされている中で、「地域権利憲章」が運動の生命力をどのように発揮していくのかと問いました。
 村下教授は、今回の公開討論会では、地域権利憲章」の必要性と性格、運動の原理、原則や権利のプログラムの整理について意見が出されたとし、6月の大会までに組織内での討議をさらにすすめ、洗練されたものが提案されるでしょうと期待を寄せ、中島副議長が討論会をしめました。