3月17日、国の原爆症認定審査に関わる「新しい審査の方針」(以下「新方針」)が、厚労省健康局主導もと承認された。今回の 「新方針」は、これまでの「原因確率」に基づく審査を改め、残留放射線の影響を広く認めざるを得なくなった点については、集団訴訟や被爆当事者、弁護団、支援者による長い闘いの一定の成果だといえる。
そういった評価はできるものの、「新方針」は、以下のような重大な問題点を含んでおり、長く原爆被害に苦しんできた被爆者の身体と心の救済にはほど遠い。
★以下、その問題点について触れておきたい。
1.各地の地裁判決を無視している点。(裁判所命令との相違点がそのまま)
2.被爆した時間や距離を優先するあまり現行の被爆者援護基準と相違が生じている。(申請する権利の侵害にあたらないか)
3.肝機能障害や甲状腺機能低下症を積極的に認定する疾患から外し、「放射線起因性が認められる心筋梗塞」といった条件を設定しているが、どうやって放射線に起因するものと証明できるのか。誰がやれるのか。(意図的な切り捨ての論理ではないのか)
4.積極的認定に該当しない場合の「起因性」の判断を、被爆線量、既往歴、環境因子、生活歴等、総合的判断としている点は被爆者側のみならず、与党プロジェクトの意見とも合致していない。

※以上の点から今回の「新しい審査の方針」は、もろ手をあげて良かったといえるようなものには思えない。いずれ多くの患者団体や弁護団、支援共闘から更なる見直しを求める意見が厚労省に集中するのではないだろうか。