08年5月2日
「その時歴史が動いた 〜全国水平社・差別との闘い〜」の放映についての申し入れ

全国地域人権運動総連合は、前身の全国部落解放運動連合会の時代を通じ、国民融合にもとづき部落問解決を果たしていく運動を各地で展開してきた。同時に特権的同和行政や確認・糾弾路線のもと国民と部落住民の分断をはかる「解同」や権力に対して厳しく批判を行ってきた。
また、一昨年以来露になった関西方面での「解同」と行政の構造的癒着問題でも、公正・中立に背向くその報道のあり方にかかわり貴社に対しても幾度か抗議と申し入れを行ってきた経緯がある。
今回、08年4月16日に放映された「その時歴史は動いた〜全国水平社・差別との闘い〜」の放送についても、その資料協力者とゲストの配置、そしてなぜ今この時期の放送なのかなどについて多くの疑問を持たざるを得ない。これら番組編集の課題とあわせ、放送された内容について、以下の問題点を指摘する。
1、 番組全体は、水平社結成当時を再現させる映像や特定の個人、スタジオゲストの証言や評価を交えて、厳しかった部落差別の一面を強調し、現在もなお引き続いている、という流れに終始している。
2、 穢多、非人の呼称を用いながら、江戸時代と明治で問題は大きな変化はなかったかのごとく描いている。そして部落問題の捉え方についてその職業に重きを置き、あたかも部落問題が職業を起源とする差別の問題であるかのごとく理解される説明となっている。また、穢れを忌避する「社会的習慣」が問題の最大の要因であるかのごとく描かれている。
3、 番組は、半封建制の残滓であるという部落問題の属性について正確な言及をせず、「差別」全体に無理やり連関させ、近代社会の「能力」による差別などと混同させる内容となっている。それは、国民の「心」、「習慣」などの改変を呼びかけるもので、道徳的教訓のみに陥る傾向を持っている。
4、 水平社の運動が、今日の日本国憲法の精神にいかに反映されてきたか、今日の人権確立にどういうかたちで結びついてきたのか、などが明確にされていない。その一方で、「地名総鑑」を現在も広範な被害をもたらしている問題として取り上げ、また50年前に差別を受けたという広島の女性を登場させてあたかも部落問題がいまなお深刻な問題であるかのごとく描き出している。
5、 総じてこの間のNHKの部落問題の取り上げ方は、解決にむけて大きく前進した状況を正しく国民に知らせることを放棄し、問題や課題の背景に部落問題解決に逆行する「解同」の糾弾路線や特別な対策と予算を継続する行政・教育のもたらす「逆差別」があることも指摘しないなど、公正中立、真実の報道にほど遠い実態にある。かかる姿勢を全面的に見直すことを強く求めるものである。

以上の点について、責任ある担当者との話し合いを行うことを申し入れる。