厚生労働省の諮問機関である「中央最低賃金審議会」の小委員会は5日、2008年度の地域別最低賃金の引き上げ額の「目安」を決めた。このニュースは、その日の夜のニュースで小さく報道された。あまりに小さい扱いなので全国的にそう知られていないのではないだろうか。
さて、肝心のその内容はというと、時給で前年度に比べ15円程度の増加で経営側委員と労働側委員が合意したという。これにより初めて700円を突破する見通し。引き上げ幅も、「時給で示す現行方式となった02年度以降で最大だった2007年度(14円)に匹敵する額となる」というのだが、実際には、全国各地で国の示した「最低賃金」を下回る実態がある。
一般にあまり知られていないが、特に、最低賃金法の枠外となっているのが各種障害を持っている人々だ。時間あたりの賃金を少し上乗せしたら、「あなたたちは労働者として認められたのだから、もう障害者手当てはいらないでしょう」などと、手当てを削減する方向へもっていこうとする。こういった最低賃金法をめぐる問題は多い。
今回の本題にもどるが、新聞マスコミ各紙は、「格差是正を求める政府や世論の意向に沿った形の目安の提示となった。最低賃金が生活保護水準を下回っている12都道府県については、働く意欲の低下につながらないよう「逆転」解消を求めた。」と概ね小委員会決定を賛辞する報道のようにみえる。
だが、果たしてそうなのか。当初労働側委員は時給50円前後の賃上げが必要だと論陣を展開していたという。その裏には、トヨタやキャノンといった大企業や都市銀行がバブル期以上の空前の利益を上げ続けていることと無関係ではない。賃上げすれば中小零細企業の経営が圧迫されるということを理由(隠れ蓑)に大企業のボロモウケを援護する結果につながりはしないか。
改正最低賃金法の施行を受け、従来と異なる「目安」の提示方法として、47都道府県を計4グループに分類した上で、各グループ内で最低賃金が生活保護を下回る場合は、逆転解消を求めるという。最低賃金が生活保護を上回る35県は、引き上げの目安を時給で提示。Aランクの愛知県は15円(前年度19円)、Bランクの栃木県など6県は11円(同14円)、Cランクの福岡県など14県は10円(同9-10円)、Dランクの鹿児島など14県は7円(同6-7円)を提示ということだが、これで今の不安定就労・低賃金労働の実態や貧困の解消に結びつくとは到底思えない。