日本学生支援機構という名前は知らなくても、旧名称の「日本育英会」なら誰もが知っていることでしょう。いま全国の大学生、特に私立大学の学生が授業料が払えず年間1万人以上が中途退学している実態をご存知でしょうか。旧・日本育英会は、高い学費を補うため学生たちが奨学金を利用していたことで有名です。その旧・日本育英会が今日、日本学生支援機構という名称に変えてから奨学金利用を困難にしていることが明らかになってきました。現在3人に1人が利用中。

アメリカの金融破綻の影響が日本経済にも深刻な影を落としているなか、新規卒業生のなかにも企業からの「内定取り消し」など、学生たちの進路を暗いものにしています。そんな中、卒業して就職した人たちも相次ぐ失業と非正規雇用など低所得のため、奨学金返済の滞納が急増しているといわれています。

日本共産党の「しんぶん赤旗」でも大きく取上げられていましたが、私立大学4年間の学費が400万円として、日本学生支援機構から月額10万円の有利子の奨学金を受けた場合、返済にともなう利子は年1.04%。20年間の償還期間で52万円が利子。高校でも奨学金を借りていた場合の奨学金の総額は576万円。それを20年かけて返済するわけですが、いま、実際には大学を卒業してもパートやアルバイトなど非正規労働で低賃金で働く若者が多く、年収200万円以下の生活であることもよく知られています。

税込み200万円として、いろいろ引かれて月の手取りは12~15万円程度、そのなかから家賃や食費、光熱費等を支払うと手元にはほとんど残らないのが若い人たちの生活実態です。そういった収入の中から毎月27000円の支払いはかなりむずかしいといわなければなりません。

さて、日本学生支援機構の奨学金に関して、有利子化がどんどん進んで、1996年に全体が2000億円で76%が無利子だったのが、2000年に4000億円、無利子が53%と約半分に。そして2008年には、全体の貸付額が9000億円を超え、無利子はわずか30%の比率にまで下がっています。こういったなかで、滞納者の推移比較を見ると、無職・低所得といった経済的理由で全体の約68%が返済困難な状況になっています。

奨学金の返済が滞ると、延滞金が加算され返済額は約2倍へと増加します。病気や失業で収入が少なくなると申請手続きをすればへんさいが猶予されますが、それさえ知らずに無理な返済を繰り返して、生活が成り立たなくなっている人もいます。機構では、9ヶ月間滞納すると法的措置の対象として、延納者情報を個人信用情報機関に通報する方針をとっています。また、文部科学省の担当者は、「裁判所が返せるのに返さないと認定した場合、給与や物品を差し押さえます。何もないときには、破産するかもしれない」といいます。なんとなく高利貸しの論理とどこがどう違うのか?

やはり人権連の進めている「お金がなくても学校にいきたい」という教育署名の重要性をもっと広げていかなくてはと思った次第です。