年頭あいさつ
社会構造の激変に対応した地域人権運動の構築を
全国地域人権運動総連合議長 丹波 正史
新春のお慶びを申し上げます。
旧年中はいろいろとお世話になり心よりお礼申し上げます。本年もよろしくお願い致します。
今年は、前半が四年に一度の統一地方選挙、後半が「地域権利憲章」に関する人権連の臨時大会と、大きな課題をかかえています。この二つの課題を何としても成功裏に進めなければなりません。これらの取り組みの中ですべての自治体での同和行政を終結させるとともに、部落問題解決の大道の障害物である「解同」問題の克服に全力をあげる決意です。
いま新たな取り組みが必要になっています。その根拠は3つあります。第1は、家族と地域をとりまく状況が大きく変わったことです。人類史が経験したことのないわが国での超高齢社会の出現、そして「限界集落」「無縁社会」などにみられる地域社会の深刻な崩壊状況です。第2は、新自由主義による権利破壊の進行です。働く人びとの就労形態や労働権が大きく損なわれ、貧困層の増大と格差社会の広がりです。このもとで平等権が空文化されてきています。第3は、アメリカと財界に奉仕する古い政治から抜け出せない政治状況での国民間での閉塞感の広まりです。戦後65年が経過する中で古い枠組みが政治疲労をきたし、国民の政治変革への願いにもかかわらず、国民本位の新しい政治の道が切り開かれていないことです。
では、こうした社会構造の激変と旧態依然とした政治の枠組みをどう打開するかが問われています。地域住民運動の焦点をどこに当てるか、人びとの心を一つにする結集のカナメは何か、こうした課題にこえなければなりません。
どこに焦点を当てるかでは、第1に、深刻な実態と広がりをみせる貧困問題の克服の取り組みです。第2に、高齢者に人間らしい生活を保障するために、医療や介護、生活支援の取り組みです。第3に、就職難、派遣切り、ワーキング・プアなど、若年層の就労問題での取り組みです。これらは地域人権の課題そのものであり、まさに今こそ人権連の存在意義を示すときです。
人びとの心を一つに結集するには、血縁と地縁の最後のセーフティネット、安全網をどう運動論、組織論で築いていくかにあります。この地縁、血縁が希薄になった背景には、労働者を使い捨てにする大企業の勝手を許している社会システムにあるといわれています。人口構成の急激な変化に伴い、全世帯で一人暮らしが4割(2030年)に迫ると予測され、単身世帯の急増と超高齢化が地域社会を襲います。これは20年先の問題でなく、いま生活を営んでいる私達自身の課題です。悪政を許さない運動とともに、急激な社会構造の変化にどう運動が対応するかがカギです。
そのためには、これまでの旧「部落」を基盤にした運動から全市民を対象にした運動へ視点の大転換をはかること、住民の多様な願いや要求に対応する「地域相談センター」などを立ち上げ要求実現の運動の先頭に立つこと、地域共同体の輪が薄れ、家族の中ですら一人ひとりが孤立する状況を打ち破る生活支援を含めた「絆」の組織形態を追求すること、住民の要求を実現するために介護などでNPOなどによる事業化を推進すること、高度経済成長以後、急激に増加した医療、介護、保育、教育など多様な専門職の人びとを地域で結集し地域づくりで活躍してもらう場を提供することです。
こうした取り組みのキーワードは地域社会での権利獲得のためのネットワーク(網の目)づくりです。いま地域では多様なNPOなどの団体や事業所が活動していますが、地域づくりのための本格的なネットワークは形成されていません。この潜在力を血縁と地縁の最後のセーフティネットづくり活かせば、いままでの地域社会は大きく変わる可能性があります。
私達は、人権連本部の体制を強化しながら、若い世代の後継者を大いに育成し、女性に活動舞台を広げてもらい、それぞれの世代にあった役割を果たし、地域人権運動を勇躍させましょう。