少し時間が経過したものの、連休初日となった4月29日に発表された日本銀行の「経済・物価情勢の展望」について考えてみたい。経済成長率についていえば日銀の「企業短期観測調査(短観)」の発表をよく耳にするが、それらと並んで中長期的ビジョンとなるのが「経済・物価情勢の展望」にあたる。

4月29日の「経済・物価情勢の展望」によると、「3・11大震災」が景気に大打撃を与え当面景気は悪化し不確実性が高まったとの見方をしているものの、今年秋頃から「復興」が進み供給面の制約がなくなり景気は回復の方向となると予測している。

まずこの「秋口」という時点に関して「?」である。日銀は、景気への打撃に関して、これまでの輸出依存による景気弱体化、材料・部品調達の遅れ、電力不足、原発事故による企業活動と生活破壊などによって、消費低下が広がり景気は減速という見方をとっている。この内容は間違いのないところだう。ただし、日銀は、3ヵ月が経過したいま現状を4月29日時点で予測できなかったのか、今年、秋口にはこれらの問題はほぼ解決され、企業活動や経済活動、ひいては雇用情勢や日常生活に支障がなくなっているだろうと炎天下の「ソフトクリーム」並みの甘い観測に立っていたといえる。4月29日といえば、福島第1原発の事故の中身がどれだけ重大性を含んでいるか、また、大震災と津波被害がどれだけ被害を与え、現地が復興以前の問題をどれだけ抱えているかがある程度推測できるだけの材料はあったはずなのだが、出された予測はあまりに楽観的なものだった。

3月11日以降、農業、漁業だけでなく、多くの中小零細企業も壊滅的な被害の中で倒産が続出している。関連倒産や解雇は東日本だけにとどまらない中で、景気回復へは政府が内部留保をため込んでいる大企業等に対して大ナタをふるう決断(英断)が必要だろう。それでも今年の秋口の回復は難しい局面にある。日銀はどこをみているのだろう。