東京電力福島第1原発事故もあり、東京電力株主総会では、多くの株主から「経営幹部の高額報酬などをカットしてなぜ被災地支援にあてなかったのか」「原発には反対だ」といった経営側の姿勢を追及する意見が集中したといわれる。NHKや民報などの株主への事前聞き取りでも同様の声がありラジオなどで耳にした人も多かったと思う。今期の赤字額は1兆数千億円。東電の株価も暴落状態のままだ。

これより先に政府菅内閣は、東日本大震災復興財源問題なども絡めて、年金問題や医療・介護など社会保障費をどれだけ圧縮できるかを議論するとして「税と社会保障の一体改革」構想を打ち立て、前提としてマスコミ等を通じて、「消費税率のアップ」「所得税の一時上乗せ」「サラリーマンの妻など3号被保険者の厚生年金強制加入」「年金支給年齢の引き上げ」「医療費本人負担額の引き上げ」「医療・介護補助率の引き下げ」など、矢継ぎ早に構想の中身を「復興支援」「持続可能な年金制度へ」をキャッチコピー的に使用して、「これしかないんだ」と世論誘導を行っている。

震災復興のための財源は「復興特例国債」構想だ。これは他の赤字国債とは別に償還時期や内容を現在の国債とは変えて特例的に発行しようとするものだ。もともとは震災直後の共産党からの申入れだったと記憶している。ただ、こうした国債を230兆円以上の内部留保をため込んだ大企業にどれだけ買い取らせるかという活用のあり方が焦点となるだろう。これとは別に、法的根拠も何もない米軍への思いやり予算といわれる年2000億円以上湯水のごとく使っているものを止めて、復興財源にまわすべきだ。

消費税率については2015年までに10%以上にするという構想は、被災地で暮らす住民の肩に重くのしかかることは自明の理である。中には風変わりな経済学者もいるようで、「消費税に逆進性はなく、誰もが買ったものに応分にかかるよい税金システムだ」と、真顔でいうのには驚きである。被災地では家屋の流失・損壊をはじめ、職場を失った人たちも数え切れない。廃業せざるを得なかった中小零細企業も多い。雇用保険の適用も半年~1年でなくなる。被災地にいても派遣先で仕事をしていた期間工や臨時工、パートなど非正規労働が解雇された場合、被災者ではないことから避難所や仮設住宅にも入居できず、手持ちの現金がなくなると路上生活に陥ることも明らかな状況にある。

こうした状況は、すでに充分予測されていたはずなのに、国はそれらをどう解決していくかといった議論をそっちのけで、原発問題は大本営発表を思わせる報道統制を行い、リーダーシップのない菅総理の進退問題では、原発を推進してきた「自民党」自身が安全性を追及したり、進退をめぐって、「やめろ、やめない、やめるのはいつか」といっているかと思えば、「復興に向けた大連立を」など、国民を愚弄した極めて無責任な茶番劇を繰り広げ、大手マスコミも多くがその路線に乗っかり、国民、特に被災地住民の心の底から湧き出る世論の代弁をも放棄していることから事態は深刻だといえる。

国民や被災地に寄り添えない巨大政党の「大連立」という野合、そして「税と社会保障の一体改革」とセットとなっている消費税率10%への道。環太平洋経済連携協定(TPP)問題なども複雑にからみあって、延長国会は目を離せない。