全隣協などは各都府県や市町村、隣保館に「実態調査」協力の依頼を通知しています。
この問題について全国人権連は6月の和歌山全研基調報告で以下のように「反対」の立場を明らかにしています。
ついては、法的根拠もなく、関係住民を洗い出し、そのプライバシーに係わる事柄を把握するなど、一部の賛意の下で進めることに強く反対します。

(4)「厚労省同和問題実態調査」なるものは、問題解決に逆行する
①「解放新聞」(2011年4月18日付け)は、「隣保館を拠点とした同和問題解決に向けた実態調査」が厚労省の「地域福祉推進事業」として7月頃に行われると報道しました。
狙いは、人権侵害救済法制定のために被差別体験などの実態を明らかにし、法制定実現の立法事実を収集すること、住民の課題を明らかにし要求の組織化や同盟員拡大に役立てるというものです。市町村保有の行政データから同和地区のデータを抜き出し地区概況調査を行うのは公務員の仕事であり、同和地区住民へのアンケート配布回収は隣保館職員の業務であると、行政の全面的支援をも打ち出しています。こうして同和対策の復活をはかろうとしています。

②厚労省の地域福祉推進事業は、「地域社会における今日的課題の解決を目指す先駆的・試行的取組等に対する支援を通じて、社会福祉事業の発展、改善等に寄与することを目的」にしています。一般型は2500万円を上限に全額国庫補助です。2010年度採択法人に「社会福祉法人大阪府総合福祉協会」(旧「大阪府同和地区総合福祉センター」)があり、「隣保館における地域社会資源との連携調査とあり方検討事業と先進事例集作成事業、隣保館支援地域生活実態調査に向けてワーキング委員会の開催」を内容としています。
「解同」高知県連は全市町村に調査協力に係わる要請書を4月中に送付し、「解同」中央生活労働運動部がいう「部落差別を解消することを目的とする行政」を同和行政の概念として認めることなど、「解同」の考え方に同調するかどうかの返事を求めていました。
問題は、2002年3月末に総務大臣談話で「国、地方公共団体の長年の取組により、劣悪な生活環境が差別を再生産するような状況は今や大きく改善され、また、差別意識解消に向けた教育や啓発も様々な創意工夫の下に推進されてまいりました。このように同和地区を取り巻く状況が大きく変化したこと等を踏まえ、国の特別対策はすべて終了することとなったものであり、今後は、これまで特別対策の対象とされた地域においても他の地域と同様に必要とされる施策を適宜適切に実施していく」との方針に反することです。
高知県も昨年12月に「解同」から「実態調査の実施」を求められたおりの回答で「法の失効後は地域や人を特定せずに、行政課題ごとに施策を実施してゆく。したがって、施策ニーズを把握するために調査が必要な場合は、行政課題ごとに行う」と、拒否しています。
自主的団体が任意でアンケートを行うことはあり得ますが、行政補助事業で地域や人を特定して公務で行うことは、同和問題の解決に逆行することであり、総務大臣談話にも反するものであり、行政が関与することに反対するものです。

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