人権委員会設置関連法案と国民の人権
全国人権連事務局長 新井直樹
はじめに
二〇〇二年三月、参議院法務委員会に提案された人権擁護法案は、名古屋刑務所での革手錠事件が起きたこともあって、報道規制に反発するマスコミが一斉に反対報道をし、翌年一〇月衆議院解散に伴って廃案になりました。
その後二〇〇五年三月には、自民党内の総務・法務合同部会等で法案のもつ言論表現の自由に対する規制や機関の強権性などが問題になり、党内を二分する議論が続けられましたが一致点を得られず、八月末「小泉郵政解散」により議論どころではなくなりました。
今回は民主党が二〇〇九年九月に政権を取ったことで公約の実現を盾に、六人目の法務大臣である小川敏夫氏は法案概要や骨子を公表し、六月半ばまでの国会で成立をはかろうとしています。
無料法律相談の案内を自治体広報紙などで見かけますが、法務局受理を入れると年間六〇万件を超える相談があります。また人権侵犯事案は二万件を超えています。こうした「人権救済」を司法手続きではなく「簡易・迅速・効果的」に対応するため新たな人権機関(人権委員会)を設け、人権擁護委員の改編も合わせて行おうとするのが人権委員会設置関連法案です。
この機関は国民の人権を守るのか。結論は否です。いくつかの問題を提起します。

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(部落問題研究所「人権と部落問題」2012.5 月号掲載)