2013年8月1日 全国人権連事務局長 新井直樹

麻生副総理兼財務大臣は、7月29日都内で開かれたシンポジウムで、憲法改正に関連して「憲法の話は狂騒の中でやってほしくない。ドイツのワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。誰も気付かないで変わった。あの手口、学んだらどうかね」などと述べた。

民主主義を圧殺しユダヤ人虐殺に至るナチスの賛美は国際社会では「犯罪」であり、EU等では公職から追放される。閣僚にある者として恥ずべき認識であり発言だ。ナチス被害者への謝罪、そして閣僚および議員辞職を断固求める。

ワイマール憲法は、ナチス政権下の全権委任法の成立により「改正」ではなく「停止」され「死文化」した。その後、ナチス自らが国会議事堂に放火し、共産党に罪をなすりつけ、罪なき人々の大量検挙、強制収容所送り、処刑と続いた。誰も気づかないうちに憲法「改正」が進んだのではなく、弾圧と恐怖のうちに独裁が形づくられた。人権と民主主義を尊重することこそ学ぶべき事だ。民族圧殺の歴史を学べとは、政治に携わる者としてゆゆしき認識であり、資質が疑われる。

憲法論議は、国の最高法規を論ずるものであり、軽々に改正ハードルを法律並みに下げる事が優先されてはならない。とりわけ国民の間での自由で闊達な議論が保障される必要があり、政党案の押しつけやマスコミ等の誘導をも排し、それこそ「狂騒」のなかで論議決定されてはならない。

全国人権連は「地域人権憲章」で「憲法が息づき、一人ひとりが輝く地域社会を」謳っている。この立場から憲法を地域社会に活かすことを広く訴えてゆくものである。