高知県庁と高知市役所 国の特別措置法の終了(2002年3月末)後も「一般対策の中で同和対策」を継続し、県内市町村の中で唯一「同和」を冠する課を残してきた高知市が、2月に「同和対策関連施策の見直し」(以下、「見直し」)を行いました。そして4月からの「見直し」は、市民の批判の強い一部を手直ししたものの、「解同」高知市協の強い圧力を受けて、同和施策の大半を継続しています。 「手直し」は、「基幹的施設」の清掃業務などを随契(随意契約)から「原則競争入札」に切り替えたもの。対象は「解同」高知市協系の労働事業協会や全国自由同和会系の県雇用促進事業協会と随契してきた木村会館、福寿園、潮図書館、水道局など7箇所の清掃や讐備。
 「随契」自体は地方自治法にもとづく契約方法ですが、高知市は「解同」系の労働事業協会とは民間企業と比べ3倍近い高額随契をして批判されていました。
 しかし、「解同」の圧カを受けて同和施策の大半を継続。これを象徴するのが4月発足の「同和人権啓発課」です。同和対策課と人権啓発課を統合した課ですが、「解同」市協は昨年10月20日、市長以下の市幹部60名を森田益子議長のお膝元・朝倉総合市民センターに呼びつけ、約200人の同盟員を動員した「交渉」の席で、『同和対策課の名称堅持」を強く迫っていました。
 所管が同和対策課から人権教育課に移った「平ども会」の運営も心配です。もともとは「解放子ども会」。「解放」をとり、最近は旧同和地区外の子どもも入っているといいますが、主体性のない高知市のこと、「部落」にこだわり続ける「解同」の影響を強く受けることは必至。この『子ども会』の運営に市は797万9000円(児童館指導員1名と児童厚生員19名の報酬除く)もの予算を組んでいます。
 改良住宅(同和向け住宅)への入居方式を、異例にも年度途中の昨年10月、抽選から選考に戻したのも「解同」の圧力の結果。昨年10月の対市「交渉」で「解同」は、「先日来の住宅入居をめぐる『背信行為』が二度とないよう切望」するという強い姿勢でのぞみ、従来の7項目の「住宅困窮度合いの判定基準」に「市民館(当時の所管は同和対策課)の意見」を追加して、選考方式に戻しました。しかし、「市民館の意見」を加えても「解同」屈服の市政に主体的意見は期待できません。

■貧乏と格差の原因・課題は共通 旧地区だけ対象の施策
 国の特別措置法の終了(2002年3月末)から5年、県がモード・アバンセヘの闇融資事件を猛省し、同和行政を終了してから6年、県内すべての市町村が一般行政移行に向かう大きな流れの中で、唯一、高知市だけが「一般対策の中で同和対策」を継続する姿は異常です。
 見直し」は、同和対策を継続する理由付けを次のように行っています。「景気が全国的には緩やかではあるが回復基調にあるのに対し、本市における回復感は乏しく、依然経済活動は低迷し、厳しい雇用環境が続いている。特に、地域では失業や廃業が著しく、市内の他地域と比較して所得が約8割であるなど、より厳しい生活状況に置かれている。教育においても、長期欠席・不登校、進路保障等の問題など、依然として地域間格差が認められる」。
 一般的に言って、旧同和地区には貧しさがあり、その意味では「格差」はあるでしょう。しかしそれは、基本的には「部落差別」に起因する問題ではなく今日の国の悪政に原因がある問題です。高知市の「見直し」も景気の動向を問題視しています。
 また、貧しさや格差は旧同和地区に限った間題ではありません。程度の差はあっても、旧同和地区内外に共通する原因・課題であり、今国民が生存権さえ奪われ、苦しみ、改善を強く求めている国民的課題です。本来、人権尊重・保障とは、憲法で保障された基本的人権が具体的に守られること。先述の国民的課題を人権の視点から解決することが、現在の行政に求められています。高知市は、同和対策の継続をやめ、全市民を対象にした施策展開を強化して、貧しさと格差問題の解決に乗り出すべきです。
 高知市が「他地域と比較」して旧地区の低さをあえて強調し、旧地区だけを対象にした施策を行うことは旧地区外の市民にとつては不公平です。同時に旧地区住民の目を国の悪政から逸(そ)らせ、政治的意識の前進と、貧しさ・格差解消の国民的運動への参加を妨げます。
 高知市の同和対策継続の本質は、「解同」市協の一部幹部対策でしかありません。これにストップをかけるには高知市の同和行政継続への市民的批判を強めると共に、旧地区内外住民の共通要球にもとづく貧しさと格差是正の協同闘争を強化する必要があります。また長期欠席・不登校、進路保障等の問題同様に考えるべきです。