人権擁護法案

12年9月27日 木曜日

「人権委」設置法案の阻止闘争継続に向けて

全国人権連は8月9月と、根本問題が何ら解決されていない「人権委員会設置法案」の拙速な閣議決定、国会提案はすべきではないと、関係方面に要請をしてきました。(8月2日付け要請 http://zjr.sakura.ne.jp/?p=774

ところが国会閉会中の9月19日、法案内容の閣議決定を異例にも強行しました。「選挙目当ての実績づくり」と批判するマスコミもあります。
一方、法務省HPには法案等やQ&Aだけでなく、「北朝鮮による拉致問題への(文書配布等による)抗議活動も不当な差別とされかねない」との意見は「誤解」との「補足説明」(24日付け)まで掲載しています。

しかし、救済機関の独立性欠如、表現行為に対する規制等の問題点を何ら変えるものではありません。
したがって全国人権連は、これまでの方針を堅持し、法案の絶対阻止、そして民意を無視した野田内閣の早期解散・総選挙を求めてゆくものです。

人権委法案を閣議決定-独立性なく救済に逆行-(「しんぶん赤旗」9月20日付け)
政府は9月19日の閣議で、新たな人権救済機関として「人権委員会」を法務省の外局に役置する法案を決定しました。藤村修官房長官は記者会見で「(法案)提出の閣議決定はもう一度必要だが、政府の姿勢を示すために決定した」とのべ、臨時国会に提出したいとの考えを示しました。
人権委は調査を行い調停、仲裁、勧告や刑事告発などを実施。委員は国会の同意を得て首相が任命します。
日本は、公権力による人権救済機関の設置を国連からも勧告されていますが、政府の人権委は法務省の外局に置かれるため、政府から独立した人権救済機関とはなりません。
しかも、救済対象に「差別助長行為」まで加えており、不当に拡大解釈される危険性を抱えるなど人権救済機関に逆行する仕組みとなっています。
人権救済機関の設置をめぐっては2002年に小泉内閣が「人権擁護法案」を提出しましたが、人権救済機関に独立性がなく、報道統制や表現の自由を侵害するものとなっていたため、批判を浴びて廃案になりました。
今回の政府案では一定の修正を加えていますが、人権侵害を救済できないと指摘された問題点は変わっていません。

人権委設置法案の次期国会提出、異例の閣議決定(「読売新聞web」9月19日)
政府は19日、不当な差別や虐待で人権侵害を受けた被害者の救済を目的とする「人権委員会」設置関連法案について、「次期国会の提出を前提として法案の内容を確認する」とした閣議決定を行った。
法案提出の際に改めて閣議決定する。法案提出に関し閣議決定を2度行うのは異例だ。
政府は秋の臨時国会に法案を提出したい考えだ。だが、野党に加え、民主党内にも「人権の定義があいまいだ」などの反対意見が根強く、法案成立の見通しは立っていない。
藤村官房長官は19日の記者会見で、「政府として積極的に取り組む姿勢を示す必要がある。政府内の調整が終わったこの時期に、次期国会に提出することを前提として閣議決定した」と説明した。関係者によると、民主党内の人権擁護推進派から早期の法案提出を確実にする閣議決定を求める声があった一方で、法案に反対していた松原国家公安委員長が海外出張中で閣議を欠席したため、異例の対応になったという。

12年9月4日 火曜日

人権委員会設置法案 今国会の提出見送りへ  各方面からの反対要請の成果

人権委設置法案 今国会の提出見送り

9月4日 14時27分

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120904/k10014766431000.html

滝法務大臣は、閣議のあとの記者会見で、新たな人権救済機関となる「人権委員会」を設置するための法案について、「今の国会の会期は、あと数日しかなく、断念せざるをえない」と述べ、今の国会への提出を見送る考えを明らかにしました。

法務省は、差別や虐待、インターネット上でのひぼう中傷などの人権侵害について、行政から独立し、調査権を持つ、新たな救済機関を設ける必要があるとして、法務省の外局として「人権委員会」を設置するための法案を今の国会に提出したいとしてきました。
これについて、滝法務大臣は、閣議のあとの記者会見で、「今の国会の会期は、あと数日しかなく、断念せざるをえない。次の臨時国会への提出を目指したい」と述べ、今の国会への法案提出を見送る考えを明らかにしました。
「人権委員会」を設置するための法案を巡っては、民主党内で、「法務局で対応する今の体制で十分だ」などとして、慎重な意見が根強く、調整が難航しましたが、先月30日になって、ようやく政策調査会で了承されていました。

滝法相、人権救済法案の今国会提出を断念 提出目指す方針は変わらず
2012.9.4 11:35

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120904/plc12090411410005-n1.htm

滝実法相は4日の記者会見で、人権侵害を救済する「人権委員会」を法務省の外局に新設する人権救済機関設置法案(人権救済法案)について、「いろんな調整ができなかった。今国会は断念せざるを得ない」と述べ、7日にも予定していた閣議決定と今国会への法案提出を見送る考えを明らかにした。

滝氏は「賛否両論ある法案を(会期末ぎりぎりに)出すというのは、次の国会につながらない。次の臨時国会に備えた閣議決定を考えていきたい」と述べ、民主党政権下で法案提出を目指す方針に変わりはないことを強調した。

8月29日に同党の法務部門会議(座長・小川敏夫前法相)が法案を了承したことを受け、政府は今国会中の閣議決定と法案提出を模索していた

12年8月6日 月曜日

人権委員会設置法案の閣議上程に反対 法務3役などに要請

2012年8月2日

滝実 法務大臣あて

全国地域人権運動総連合

議 長  丹波 正史

 

人権委員会設置法案の閣議上程に反対です

 

 マスコミ報道では、民主党の「人権政策推進議員連盟」の中野寛成会長らが1日、野田佳彦首相と官邸で会い、人権救済機関「人権委員会」を法務省の外局に新設する人権救済機関 設置法案の今国会成立に向けて、早期に閣議決定するよう求める要請書を提出。同席者によると、首相は「頭の整理ができたので、しっかりと対応したい」と答えた、といいます。

 2002年以来、成立を求める執拗な動きが続いていますが、以下の根本問題が何ら解決されていないもとでは、拙速な閣議決定、国会提案はすべきではありません。

①  公権力や社会的権力(大企業など)こそ人権侵害の元凶であるにもかかわらず、この間題を公務員の人権侵害に倭小化し、国民の言論・表現、内心の自由や知 る権利など、いままで国民間の問題で踏み込まなかった分野に、行政機関が5年後見直しと言って調査権限や罰則をもって介入するものです。

② 同和問題に係わる結婚・交際問題のように、この分野で合意されてきた政府見解では、何が差別かを判定することは困難であり、法律などで罰したり規制することは、かえって啓発に反し差別の潜在化を招くと捉えていたが、この法案は明らかに問題解決に逆行します。

  結婚・交際に際して、「差別」との断定のもとに権力が介入を行うことは、国民の内心の自由を侵しかねず、意に反する婚姻の強制など憲法が保障する婚姻の自由への行政権力の介入となり、結果的に人権を侵害し部落問題解決をも阻害するものです。

③  あくまで表現には表現で対抗することが近代社会の基本であり、定義が困難である「不当な差別的言動」「差別助長行為」などの表現行為に対して、曖昧な概 念で対応を行うことは、言論表現の自由を侵害し、しかも自由な意見交換のできる環境づくりによる部落問題解決にも逆行します。

 

 このように、国民の希望に反し人権侵害を生み出しかねない法案は、有害でしかありません。国民的検討ができる新たな枠組みを設け、そもそもから議論ができるようにしていただきたい。

 

 

12年6月23日 土曜日

人権委員会設置法は、そもそもからの議論を

 臨時国会会期末に来て、消費増税法案との関わりで国民無視の国会動向が続く。

人権委員会設置法案なるものを閣議決定しようとする動きがあるが容認できない。

言論表現の自由を擁護・確保するものを敵視するなどもってのほかだ。

国民の権利として擁護・発展させるべきものを、権力的に規制する法案を支持するなど、国民内の異論を封殺する姿勢は許されない。

論点は国民の中でクリアしなければならない。

よって拙速な閣議決定はすべきではない。

2012615-2.pdf

12年5月29日 火曜日

人権委員会設置法案、今国会提出阻止。

人権委法案、今国会断念=異論根強く―政府・民主

 

2012年 5月 29日  20:12 JST
http://jp.wsj.com/Japan/Politics/node_451025
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版

政府・民主党は29日、法務省の外局として人権救済機関「人権委員会」を設置する法案の今国会提出を見送る方針を固めた。自民党を中心に「人権委が強力 な権限を持つ恐れがある」との異論がある上、今国会は各種法案の処理が停滞し、日程が窮屈になっていることが影響した。

法務省の政務三役の一人は29日、人権委設置法案について「自民党保守派の反発が強い」と指摘。民主党国対幹部も「6月21日の会期末が近づいたこの時期の新法案提出は無理だ」と語った。

[時事通信社]

12年4月5日 木曜日

国民のための国内人権機関設立のために news1

人権委員会設置関連法案の閣議決定阻止を
民主党関係役員などへの要請をやりきろう

   201245news1.pdf

12年4月4日 水曜日

人権委員会設置関連法案の閣議決定阻止を 全国人権連 

               2012年4月4日 全国人権連

人権委員会設置関連法案の閣議決定を阻止するために

産経報道(注3)に寄れば(「人権救済機関設置法案、20日閣議決定で調整 民主保守系反発、阻止へ 2012.4.3  msn産経ニュース」)「法務省が今月20日の閣議決定を目指し関係機関と調整している」といいます。

内容は「産経新聞が入手した法案原案全文」とした解説では、昨年12月15日の「法案概要」と変わらないものといえます。今後の手続きでは「4月上旬に党の法務部門会議で法案が審議される」見通しです。

全国人権連直近の法制定阻止の取り組みは3月1日付けで、民主党関係者らに丹波議長名で「立法根拠そのものから国民的な検討と議論に附することを求め」る要請書を送付しました。

一方地方議会では、「拙速な人権救済機関の設置を目的とする法律の制定に反対する意見書」(注1)が採択されています(注2)。これは「日本会議」が請願したもので、紹介議員には自民党や公明党の議員がなり、賛成議員には共産党議員が含まれている所もあります。

(注1)

「拙速な人権救済機関の設置を目的とする法律の制定に反対する意見書」
現在、法務省は、新たな人権救済機関の設置等を規定した法案を、今通常国会に提出する意向を示している。
不当な差別や虐待などからの救済を目的に、新たな人権救済機関を設けるという同種の法案は過去にも提出されたが、人権侵害の定義が不明確であるなどの理由から成立には至らなかった経緯がある。
昨年8月に法務省政務三役名で公表された基本方針では、自由な報道活動を阻害する恐れのあるメディア規制を設けないなど、これまで批判の強かった条項が除外されている部分はあるが、新たな人権救済機関として人権委員会を設置し、国家行政組織法第3条第2項に基づく三条委員会とすること、人権擁護委員の資格要件、また、人権侵害の定義が不明確であることなど、議論を尽くすべき点が多数存在している。
よって、国においては、十分な国民的議論を経ないまま拙速に新たな人権救済機関の設置を目的とする法律を制定しないよう強く要望する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成24年3月26日
埼玉県議会議長  鈴木聖二
衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 法務大臣 内閣官房長官 様

(注2)県議会(新潟、熊本、群馬、岡山、徳島、神奈川、埼玉)
市議会(船橋市、越前市、徳島市、鳴門市、大和市、堺市)

こうした状況のもと、当面次の「要請文」をもとに取り組みます。

        2012-4.pdf

(注3)

人権救済機関設置法案、20日閣議決定で調整 民主保守系反発、阻止へ
2012.4.3  産経
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120403/plc12040301100001-n1.htm

差別や虐待による人権侵害の是正を図るための人権救済機関「人権委員会」を法務省の外局として設置するための「人権救済機関設置法案」について、法務省が今月20日の閣議決定を目指し関係機関と調整していることが2日、分かった。同省は今国会での成立を目指すが、民主党保守系議員らは「人権侵害」の定義が曖昧で拡大解釈により憲法が保障する「言論・出版の自由」が侵害される恐れがあるうえ、消費税増税法案をめぐる党内の混乱に紛れて提出しようとしていると反発、閣議決定阻止に向けた動きを始めようとしている。
産経新聞が入手した法案原案全文によると、人権委は国家行政組織法3条に基づく独立性の高い「三条委員会」と位置づけた。人権救済にあたる人権委員は衆参両院の同意人事とし首相が任命する。
深刻な人権侵害がある事案については刑事告発できる強力な権限を与えた。当事者間の調停や仲裁を実施し、重大な人権侵害に勧告を行うことも盛り込んだ。
人権擁護委員については日本国籍の有無については明確に触れておらず、かりに永住外国人に地方参政権が付与されれば、外国人も就任できるようになる余地を残している。
民主党は、政務三役や「人権侵害救済機関検討プロジェクトチーム(PT)」で法案の策定作業を進めてきた。野田佳彦首相も昨年9月の内閣発足時、平岡秀夫法相(当時)に重要政策課題として「新たな人権救済機関の設置」を指示、法務省は昨年12月に法案の概要を発表した。
ただ、政府内には法案の閣議決定に消極的な意見が少なくない。民主党内の保守系議員も「消費税増税法案をめぐって党内が二分しているどさくさに紛れて法案を出そうとしている」と批判。4月上旬に党の法務部門会議で法案が審議されるとみて、党内手続きの阻止に向けて賛同者を呼びかけることにしている。
同法案をめぐっては、法務省が自民党政権時代に「人権擁護法案」を策定した。しかし、自民党内で反対論が出て、断念に追い込まれた経緯がある。

12年3月22日 木曜日

自由法曹団意見書  法務省政務三役「人権委員会の設置等に関する検討中の法案の概要」に反対し、修正を求める

   2012年2月21日
東京都文京区小石川2-3-28
DIKマンション小石川201号
TEL03-3814-3971
FAX03-3814-2623
自 由 法 曹 団

http://www.jlaf.jp/html/menu2/2012/20120221182438.html
はじめに
法務省政務三役は、2011年8月2日、「新たな人権救済機関の設置について(基本方針)」を発表し、その後2011年12月15日に「人権委員会の設置等に関する検討中の法案の概要」(以下、「法案の概要」という)を発表して、法務省が検討してきた国内人権機関設置に関する法案の骨子を示した。
国内人権機関は、政府から独立して国内の人権問題に関わり人権擁護の推進を図る機関であり、1993年に国連で採択されたパリ原則に基づき、国連機関及び条約機関から日本に対し、これを設置するよう再三勧告が行われている。私たち自由法曹団も、公権力による人権侵害を救済できる、政府から独立した国内人権機関が設置されるのであれば歓迎するものである。
しかしながら、「法案の概要」で示された国内人権救済機関(「法案の概要」では「人権委員会」と呼称されている。以下、同様に「人権委員会」という。)には、以下のような見過ごせない問題点がある。私たちは、以下のとおり問題点を指摘し、法案の修正を求めるものである。
1 差別助長行為を対象とすることは断じて許されない
「法案の概要」では、救済対象行為として、「人権侵害」の他に、「差別助長行為」を挙げている。しかし、「差別助長行為」を救済対象行為とすることは断じて許されない。
まず第1に、「差別助長行為」とは何か、その定義を明確にすることは不可能である。助長という言葉の国語的意味は明確であっても、具体的にどのような行為が助長にあたるのか、を考えた場合、その範囲は漠然としており、助長行為とそうでない行為との限界は不明確である。助長であるか助長でないかは、その判断者次第で、如何様にも解釈されるおそれのある文言である。
第2に、そのような行為該当性が不明確な概念を救済対行為とすると、人権委員会は「差別助長行為」があったから救済せよとの申立を受けることによって、「差別助長行為」か否かの判断に苦慮することになろう。何が「差別助長行為」なのか限界線を引けない以上、申立人がある行為を「差別助長行為」と強く主張してくるとき、人権委員会はそれを否定する術がない、否定するとしてもそれが「差別助長行為」ではないという根拠を一義的に提示することができず、「差別助長行為」か否かの論争に終止符を
打つことができない。その結果、「差別助長行為」の認定は、極めて申立人の主張に依拠してなされる危険性があり、人権委員会は、主体的に人権侵害行為に対する救済活動をすすめることに障害を抱えることになろう。人権救済機関としての本質が徐々に変質していく可能性すらあるといっても過言ではない。
したがって、「差別助長行為」は救済対象行為から必ずや除くべきである。

2 「人権侵害」の定義に関して「不当な差別、虐待その他の」という例示を設けてはならない。
「法案の概要」では、「人権侵害」に「不当な差別、虐待」という例示を設けている。しかし、「不当な差別、虐待」は人権侵害を代表するような中心的な人権侵害行為ではなく、例示とするには不適格である。
さらに、逆に、「不当な差別、虐待」を例示することによって、人権侵害が「不当な差別、虐待」及びそれに類するものであると限定的に矮小化されて解釈されるおそれがある。
したがって、「不当な差別、虐待」という例示は必ずや除くべきである。

3 「人権侵害」の定義として、「司法手続においても違法と評価される行為」をあげるべきではない。「人権侵害」の定義は、
「憲法、国際法、法令等に反する行為」とすべきである。
「法案の概要」が「司法手続きにおいても違法と評価される行為」としたのは、人権侵害の定義がいたずらに拡大するのを防ぎたい、過去の判例の集積などを参考として、人権侵害の定義を明確にしたいとの意図があるものと善解することができる。
しかし、「司法手続きにおいても違法」とした場合、たとえば、行為自体は人権侵害行為に該当するとの心証がある場合であっても、時効や除斥期間の経過で訴訟法上は人権侵害行為が認められない場合は人権委員会による救済の対象にならないのか、との疑義を招く。また、訴訟においては人権侵害行為と認定するには証拠が不十分である場合には、人権委員会においても救済の対象にはならないのか、との疑義を招く。このように人権委員会という行政的手続きの定義規定に「司法手続き」を持ち込むことは、
無用な混乱を招くだけでなく、定義として不用意である。
また、日本の国内人権状況については、国際人権規約の規約人権委員会の勧告など、国際条約上改善を求められている事項もあり、日本の司法手続きにおいては違法とされないものであっても、規約人権委員会がより積極的に対応し、人権救済を先進的にすすめていくべき分野も存在する。むしろ国内の司法手続きを尽くしてもなお違法とされなかった問題について、規約違反を理由に救済される事例がうまれることも期待したいし、また、国内法が国際人権規約委員会により不適法とされ、それまで違法でな
いとされてきたものが、国内法の整備に先立って、違法に転ずる事例も期待したい。
したがって、「司法手続きにおいても違法と評価される行為」などと限定すべきではない。「憲法、国際法、法令等に反する行為」とすべきであり、かつ、それで必要にして十分である。

4 人権委員会の組織についての問題点
(1)人権委員会は内閣府に設置すべきである。
「法案の概要」では、人権委員会を「法務省の外局」とし、国家行政組織法3条2項の3条委員会として設置するとしている。「法案の概要」は、人権委員会の組織は、人事については国会の同意を得た上で内閣総理大臣が任命するものであり、予算についても委員会に配分権があるので、独立性が保たれるとの考えに出ているのであろう。
しかしながら、法務省の外局として設置されるのであれば、法務省内での人事異動がされるなど、法務省との人的組織的密接性をぬぐい去ることはできない。刑務所、拘置所及び入国管理局など、法務省が管轄する機関は、身体拘束を伴う密室性ゆえに、残念ながら人権侵害多発地帯である。そうした法務省管轄機関における人権侵害行為に対して、法務省の外局たる委員会が、どれだけ実効的な救済行為ができるかは、疑問である。また、そのような疑義を招くことは、人権委員会への信頼性を揺らがせるものである。人権委員会が人権救済機関として実効性のあるものとして産み出し、機能させるためには、組織上の脆弱性を有してはならない。従って、人権委員会は内閣府に設置すべきである。

(2)人権委員会の地方組織を充実させるべきである。
「法案の概要」では人権委員会の地方組織の事務局の事務を法務局長・地方法務局長に委任するとしている。
かかる案は、人権委員会の地方事務を包括的に法務省傘下の法務局・地方法務局に委任するというものであり、公権力、特に法務省管轄機関による人権侵害事件に対する対処への実効性の観点から問題がある。また、従前の人権擁護委員会制度の枠組みをどの程度超えることができるのか疑問なしとしない。
したがって、人権委員会の地方組織を国家機関の地方組織に委任するのではなく、独立行政委員会の地方組織として、独自の地方職員を充実させ、人権委員会自らが地方組織の事務を行うようにするべきである。

おわりに
真に国民の人権救済に寄与する人権救済機関の設置を求める
以上のように、「法案の概要」に示された人権委員会には救済対象行為の範囲、定義及び組織の点で大きな問題がある。私たち自由法曹団は、以上指摘した点について「法案の概要」に反対し、その修正を求める。
そして、真に国民の人権救済に寄与する人権救済機関が設置されることを求める
以上

12年3月2日 金曜日

新たな人権救済機関の設置動向に係わって、立法根拠そのものから国民的な検討と議論に附することを求めます(要請文)

     2012年3月1日
全国地域人権運動総連合
議長   丹波 正史

新たな人権救済機関の設置動向に係わって、
立法根拠そのものから国民的な検討と議論に附することを求めます

現在、法務省は、新たな人権救済機関の設置にかかわる法案を、今通常国会に提出する意向を示し作業を進めています。
2003年10月「国会解散」にともない廃案となった人権擁護法案は、審議会答申を踏襲し次のような問題を持っていました。
①政府からの独立性など国連が示す国内人権機構のあり方(パリ原則)とは異なる、
②公権力や大企業による人権侵害を除外しており、もっとも必要性の高い救済ができない、
③報道によるプライバシー侵害を特別救済手続きの対象としており、表現・報道の自由と国民の知る権利を奪う、
④「人権」や「差別」についての明確な規定なしに、「差別的言動」を「特別救済手続」として規制の対象としたことが、国民の言論表現活動への抑圧であり憲法に抵触する、点です。
法務省が昨年12月に示した法案「概要」でも、③を除き、何ら解決されていません。
特に、人権救済機関の所管について「基本方針」「概要」は法務省としましたが、私たちや多くのマスコミも内閣府の所管を求めています。基本骨格となる重要な点は5年後見なおしとすべきではなく、議論を尽くす必要があります。
さらに国民間の言論や表現・出版に係わる領域に「差別助長行為」などとあいまいな定義をもって介入することは国民の言論活動を萎縮させるものです。特に規制を掛ける規定を設ける必要はありません。人権機関による権限乱用を防止するためには、救済対象を国民の平等権侵害問題にして、取り上げる項目の列挙が必要であると考えます。
よって、新たな人権救済機関の設置に係わっては、人権施策推進審議会答申そのものもが同和対策終結以降を臨んだ事から来る重大な制約を持ち、「差別と虐待」からの救済を主としたことから、国際社会の動向や国民の願いとかけ離れたのであって、ここは原点に立ち返り、立法根拠とするそのものから国民的な検討を行うことを求めるものです。

11年12月6日 火曜日

法務省 Q&A(新たな人権救済機関の設置について)

法務省 Q&A(新たな人権救済機関の設置について)
http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken03_00041.html

平成23年12月6日

平成23年8月2日に法務省政務三役が公表した「新たな人権救済機関の設置について(基本方針)」に関して,ご意見やお問い合わせが数多く寄せられました。そこで,幾つかの点について,一問一答の形でご説明をさせていただくこととしました。

000082072.pdf

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